「納車待ち、3ヶ月です」
好きなクルマを買おうと思ったら、こんなことになるかもしれない。需要と供給だけで決まる世界になると、欲しい人がお金を出してモノを買うということになるので、バランスしたところで落ち着くのかもしれない。時間がかかる場合は、倍の値段を払っても、手に入れるということもあるかもしれない。実際、アマゾンで本を買って、早く届けてもらおうとすると、余分にお金を払わないといけなかったりする。
競争原理を導入することでムダを排すということは、大切だし、それは一理ある。しかし、競争した結果、勝つ者もいれば負ける者もいるということを理解しておく必要がある。今、そんな世界に向けて、日本は動こうとしている。
今話題の電気事業でも、「発送電分離により、競争を導入して、電気料金を下げるべし」という議論がなされている。競争を導入して電気料金を下げるというところについては、これまでも実施されてきている。その結果として、電気料金は継続的に低下している。(
資料@METI (pdf))
しかし、そんなことを知ってか知らずか、制度は変えられようとしている。その制度を変えようとしているのは、勝ち組の人間だ。政治家は、選挙で勝たなければ、政治家にはなれない。官僚は、国家公務員として採用される、つまり、就職活動の中で繰り広げられる競争に勝たなければ、官僚にはなれない。大学教授は、昔、学問を修めたことが評価されてそのポストを得ている。その理論や考え方が、これからの状況にあてはまるのか、それはよく分からないとしても...いずれにせよ、世の中は、そういう勝ち組の人たちが制度を作っている。
その人たちは、負けたことがあるのだろうか?負けない、あるいは負けたことがない、勝つ人が考えた制度は、負け組や弱者にはどうなんだろ。それなりに満足できるものになるんだろうか。
例えば、再生可能エネルギーの固定価格買取制度。電気を使う人から一律にサーチャージとして徴収されるものであるが、明らかに逆進性がある。
原子力を再稼働しない、という選択をした途端、足下を見られて、天然ガスを高く売りつけられる。そんなこともあってか、貿易赤字となったのか。ちなみに、ホルムズ海峡が閉鎖されたりしたら、カタールから大量にLNGを購入している電力会社は供給もできなくなる。もし中京圏でそんなことになったら、トヨタは年間800万台割れどころでは済まないほどのインパクトをもたらすかもしれない。さらに日本経済は凹むだろう。
発送電分離となれば、
電気、売切御免
となったり、納車待ちならぬ
納"電"待ち
となったりするかもしれない。「追加料金払うから、早くやってよ〜」ということもありえるかもしれない。経済原理で全てが動く世界は、本当に幸せなのだろうか。
天然資源のほとんどを輸入しているこの国において、最適な形というのは、全てを経済原理で動かすというものではないのかもしれない。特に、エネルギーは。
一度、変えてしまったら、二度と元には戻れない。変えること自体は問題ではない。変わることは刺激もあって楽しいものだ。ただ、社会に大きなインパクトを与える制度を変えるなら、覚悟を持って変えるべきだろう。政治家や官僚、大学教授など、今、そこに関わっている人たちは、その覚悟があるのだろうか。