「失ったのは「カネ」ではなく、「熱意」だった」

失ったのは「カネ」ではなく、「熱意」だった」という記事を読んで、民主党の事業仕分けの悪影響が出ていることを再認識。
科学技術は世界の課題解決を実現して人類の幸福に寄与するためのものであり、目先の成果ばかりに目を向ければ道を誤る。また、企業や大学のみでは経済的な負担が大きすぎて手にできない施設や研究環境は、国が担うことで世界でのプライオリティを手にすることができ、新たな産業や富の源泉をもたらすなど活気ある未来を築くことが可能となる。

 だが、2009年11月に行われた「事業仕分け」ではカネをしぼり出すことしか頭になかったため、日本の科学技術の未来を徹底して潰してしまった。科学技術分野でも様々な制度改革が必要であることは言うまでもないが、「事業仕分け」では制度改革と予算廃止や縮減が混同され、結果として、科学技術の未来を閉ざす危機を招いてしまった。

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2009年12月18日、東京大学理学部物理学科4年生有志が、「予算要求の縮減」をどう受け止めたかについて2133人(総有効回答数)の学生へのアンケートを実施し、調査結果を発表している。なかでも「公的機関での研究職を志望する学生(有効回答数946人)」の回答を見て慄然(りつぜん)とした。

将来の日本を担う可能性を秘めた多くの若手研究者たちが、「事業仕分け」を受けて日本を捨てて出ていこうとしている。「事業仕分け」の廃止や縮減で捻出して得た防衛費を上回る「子ども手当」というカネをばらまいても、その子どもたちに待っている未来は日本を捨てる道しかないということになる。

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 「事業仕分け」は国の活力を取り戻すために行われたはずだが、科学技術分野では熱意を持った研究者たちのエネルギーを徹底して奪い去って終わった。

 こういう結果となった原因は、「巨額の予算のムダ」である「子ども手当」の財源を絞り出したかったことに加え、行政刷新会議が当初から日本が生きていく道は科学技術立国としての力をより高めていくことへの認識欠如、科学技術への知的な興味や理解、期待もなかったからではないか。行政刷新会議牽引役の枝野幸男議員(現・行政刷新担当大臣)や歴史に残る質問で名を上げた蓮舫議員に日本の科学技術の知的な未来ビジョンを期待すること自体、無理とは思うが。
本当にこの国はどうなっていくのか。今の民主党は、富の偏在に嫉妬し、政治主導と称して、悪影響のある施策を進めようとしているように思えてならない。これではダメだ。

健全な競争は、社会の活力を生み、イノベーションの土壌となり、また、勝者と敗者を生む。それが現実であり、それは受け入れなければならない。

子供をこの国でオトナになるまで育てるべきなのか。改めてそんなことを考えさせられた。
Commented by long island at 2010-03-29 19:44 x
興味深い記事を教えていただきありがとうございます。

この問題、個人的にも関連が多く、一言では伝えきれないほどの嘆き、悔しみ、絶望感があります。熱意のもった研究者たちが日本を離れ去るを得ない状況を更に強固にしてしまい、さらには研究をあきらめることを考えている学生がいるということはもう国家の将来の科学技術における緊急事態ではないでしょうか。
Commented by yoshinoriueda at 2010-03-29 23:01
本当にそうだと思います。

民主党は、あいかわらず、自分達がやっていることが正しいと思っているようですが、果たしてこれでいいのでしょうか?

国民が選んだとはいえ、あまりにもお粗末な結果だと思います。

夏の参院選で変わるのか、このまま民主党が圧勝を続けるのか、支持率が落ちているので、なんともいえませんが、いずれにしても、日本が科学技術をないがしろにしているというメッセージは当分消えないと思います。

本当に、悲しくなりますね。
by yoshinoriueda | 2010-03-29 12:44 | 思うに・・・ | Trackback | Comments(2)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


by yoshinoriueda
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