#IPCC第5次評価報告書に関する国際シンポジウム(緩和の政策、シナリオ)一般公開シンポジウム

IPCC第5次評価報告書に関する国際シンポジウム(緩和の政策、シナリオ)一般公開シンポジウム(案内はこちら(pdf))を傍聴。国際シンポジウム自体は非公開のセッションもあり、そのうちの半日分が公開された形。

霞ヶ関ビルにある東海大学交友会館「望星の間」で開催されており、ぎりぎりに到着すると、会場の座席はほぼ埋め尽くされていた。きょろきょろしていると、見慣れた顔もチラホラ。

IPCC第3作業部会共同議長オットマー・エデンホーファー氏は体調不良により欠席だったが、資料自体は紹介された。概要は次のような感じか。
科学だけで目標を定めることも、政策だけで目標を定めることも適切ではない。科学だけで目標を定めるということは、そもそも民主主義的ではないし、科学でコンセンサスを得るというのは非常に難しい作業。政策だけで目標を定めるということは、実施可能性の問題が残ってしまう。

科学的にデータを集め、政策的に目標を定めつつ、科学的にオプションを検討し、またデータに戻るというループを回すことが大切。すなわち、科学と政策の対話が必要。

とりまとめにあたっては、統合評価モデルを検討するグループと、影響や脆弱性、適応などを検討するグループ、気候モデルを検討するグループ、それぞれがお互いに十分な情報交換をすることが必要。
言ってることは当たり前だが、これができていないということなのだろう。実際、最近出された再生可能エネルギーに関する報告書でも、プレスリリース自体は、ちょっと偏ったものになってしまっていたが、報告書の作成作業に関わっている人がこのような認識を持っているということは、ちょっと新鮮だった。

また、非公開のワークショップでの議論も紹介がなされた。国内政策に関する議論で、トップランナー規制のようないわゆる「規制」は、費用対効果的にはETS(排出量取引制度)のようなもののほうがいいのではないかという意見があったことが紹介された。どうせ欧州の参加者からだろうけれど。

ここで鍵となるのは、「取引費用」と「情報の非対称性」ということで、今後、議論を進めるようなことを言っていたが、これは議論しても決着はつかないだろう。行き着くところは、「どちら側」にいるかというスタンスの争いになる。政策議論の不毛さを予感させる。例えば今なら、再生可能エネルギー導入!みたいな流れが何も分かってないメディアによって作られてしまい、結局、愚かな政策が選択されてしまったりするわけで^^;

パネルディスカッションでは、ETSを推すような話も出ていた。発言者は当然欧州勢。チューリッヒ大のアクセル・ミカエロワ氏。曰く、
京都議定書で定められた炭素取引の世界では、世界で統一された基準に基づき炭素通貨として流通されている。一方、日本の二国間制度は、分断化された市場の一つとなっており、世界的に通用する炭素通貨がないのは問題。新たなメカニズムがうまく機能するには、多くの参加国による法的拘束力のある世界的な枠組みに基づき、旺盛な需要があることが必要で、分断化された市場ではダメ。
確かに、途上国が全て参加するなら、削減機会も存在するので、見た目の削減のようなものは起きると錯覚することもできるかもしれない。しかし、そんなことは机上の空論。結局、Annex I vs. non-Annex Iという争いをしている国際交渉では、何もまとまらないので、主張は全く現実的ではない。でも、現実を知らないんだろうし、日本が、特に産業界が考えていることも理解できないようだし、そんなふうに言うことしかできないんだろうなぁ。もしかしたら、日本側の、特に産業界が考えているようなことがうまく伝わっていないのかも。と考えると、ちょっと哀れかも...

IPCCの第5次報告書自体にはあまり興味はないし、期待もしていないが、いろいろな議論がなされているということを知ることができたのはよかった。とはいえ、ここでなされているような日本の考え方や声なんて、すぐにかき消されるんだろうなぁ...と思ってしまうから、余計に期待値が低かったりするのだが、作業に従事している人たちには、本当に頑張って欲しいと思う。
by yoshinoriueda | 2011-07-07 22:36 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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