「Scope 3」なんて、金儲けしたい輩がいろいろと突っ込んでいるだけなのに...
2011年 08月 19日
これはいわゆるScope3の話題だが、正式名称は「Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard」で、WRIとWBCSDが共催しており、GHGプロトコルのコーポレート基準の補遺文書という位置付けとなっている。
Scope3では、原材料の採掘・生産・輸送や、従業員の通勤・出張、製品の輸送・使用・廃棄・リサイクルなど、サプライチェーン全体の排出量を算定・報告することが要求事項となっている。
この基準によって算定された排出量を足し合わせることや、企業間で比較することには意味はなく、自社のScope1(直接排出)・Scope2(間接排出)とScope3で算定される差を比較することで、サプライチェーンのどの部分において多くのGHGが排出されているかを理解するためのツールという意味がある。
Scope3の考え方が出てきた背景としては、まず、気候変動に関する国際交渉の行き詰まりを打開するために、もう少し緩やかな仕組みを構築すべきではないかという発想がある。また、Scope1・Scope2で削減機会が枯渇しつつあるため、Scope3まで範囲を広げて削減機会を探してみようという意図もある。さらに、Scope3まで捉えることで、産業の炭素リーケージを阻止したいという意図もある模様。
Scope3の基準策定の初期に出された第一案では、監査の部分のボリュームが分厚かったが、これは、監査法人が監査という仕事を作るために盛り込んでいたものであり、各所から批判の声が出て、記述のボリュームが減った。結局、金儲けしたい人が、基準をつくっているということ。ネットで検索したら、トーマツなどの監査法人のレポートがワンサカ^^;;
さらに言うなら、従業員の通勤や出張が対象となっており、自社のテレビ会議システムなどを売り込みたいICT企業が事業機会を見出している。たとえば、NTTなどの通信系や、IBMなどのベンダー系といったところか。
現在、有志企業によるロードテストがなされているが、各社のスタンスは様々。Scope3自体を否定する企業もいれば、改善点を詳しく指摘する企業もいる。例えば、インド企業は、「Scope3が導入されると、インド企業と取引がなされることにより、排出量が増加するという話が出てくる可能性があるので、Scope3の考え方はあまり好ましいとは思えない」というスタンス。ま、結局、自分達に有利ではない基準には反対し、自分達が有利になりそうなら賛成するということで、温室効果ガスをどうやって減らすということにはあまり関係がない^^;
ちなみに、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、Scope3への対応状況を評価基準にしており、今後、情報開示の基準になっていく可能性がある。CDPは、評価基準が公開されているとはいえ、恣意的であり、これに参加する意味がよく分からないのだが、途上国を含む企業が評価されているというカバレッジの広さは、今後、無視できない存在になる可能性がある。
新聞の報道では、そんなところまでは踏み込んで書かれていないが、ま、世の中、「金が全て」ということで^^;; そして、「地球温暖化」なんて、そんな本質を包み隠す見栄えのいい包装紙みたいなものということで^^;;