世界に誇るべきソフトバンクBBに対する話題とベンチャー企業成功の秘訣

今朝もシリコンバレーは霧に包まれていたが、仕事が始まることにはすっかり晴れて、心地よい晴天に恵まれている。

さて、「日本のソフトバンク型ブロードバンドは失敗?」(山根小雪=日経コミュニケーション)という記事に対して、「日本のブロードバンドは誰も儲からない?」という記事がFPNに出ていたが、事実としては、「日本においても、ブロードバンドを事業領域にしている企業が全て儲からないわけではない」ということになると思われる。例証は簡単で、ADSLを中心に事業展開しているイー・アクセスは、営業活動によるキャッシュフローを2003年3月期から黒字化し、2003年10月に東証マザーズに上場、2004年11月に東証一部に上場している。

もとの日経コミュニケーションの記事では、英国のブルドックという会社が、ソフトバンクBBがADSLを廉価に提供したことによるビット単価下落に対して批判的な立場をとっており、「ソフトバンク型のビジネスをやる気はない」と言っていることが紹介されていた。しかし、これは、消費者不在のビジネスモデルの典型的な説明とも感じられる。彼らは、やる気はないのではなく、「やれない」のではないだろうか。

日本の通信業界だけでなく、世界的にも「悪名」の高いソフトバンクBBであるが、ADSLを廉価に安心して利用できるようにしたソフトバンクBBは、日本が誇ることのできる世界に恥じない立派な企業だと思う。もちろん、ソフトバンクBBの成功の影には、多くの人々の協力があったことだろう。しかし、競争社会において、負けた者が勝った者に対して、「ずるい」とか「ひきょうだ」とか言うのは、お門違いもいいところである。先日、お会いしたイー・アクセスの千本さんも、「日本でも、ちゃんとビジネスをすれば、ちゃんとやっていけるんだ」とおっしゃっていたが、まさに、そのとおりだろう。

ADSLというところに目を向けると、これは、もはやサービスではなく、インフラである。インフラ事業は、ネットワークを構築するための購買活動についてはインターナショナルな要素が入りやすいという側面があるが、日々のオペレーションは、ドメスティックにならざるを得ない。一方、その上にのせるアプリケーションは、
うまくパッケージ化すれば、インターナショナルに展開できる可能性が出てくる。ただし、インフラでの収益がほとんどを占め、アプリケーションなどソフト面での収益は、そこにほんの少し乗っかる程度でしかないというのが、一般的な事業構造だろう。もちろん、アプリケーションは、ヒットすれば、莫大な利益を確保できる。

このように見ると、インフラ事業の良さが分かる。なぜなら、インフラで日銭を稼ぎ、アプリケーションなどで臨時収入を稼ぐことができる可能性があるからである。もちろん、日銭を稼ぐインフラをおろそかにしてはならない。これがあるからこそ、ソフトの面で勝負できるのである。

このように考えると、通信会社にならぶインフラ会社である電力でも同じような側面があるのかもしれない。日々の電気の販売で日銭を稼ぎ、それ以外の事業で臨時収入を稼ぐことができる可能性がある。大儲けしているという話は聞かないが...(^^;ただ、もう少し想像を膨らませると、ソニーも同じようなことをやっているような気がする。

先日のPSPに関するエントリーで、ソニーはメカトロニクスの会社だと見たが、実は、このようなハードは「インフラ」であり、その上にのるソフトが臨時収入を稼ぐ部分なのかもしれない。実際、例えば、スパイダーマン2のヒットは、ソニーに大きな収入をもたらしているようである。もちろん、iPodのように、ソフトの部分との相乗効果で大ヒットすることもありえるから、鶏が先かタマゴが先かといった議論と似たようなところがないわけではない。

いずれにせよ、ビジネスモデルを考える上では、日銭を稼ぐ部分と臨時収入を稼ぐ部分の両方が必要である。日銭を稼ぐ部分は、運転資金をカバーし、臨時収入を稼ぐ部分が、成長エンジンとなる。シリコンバレーにおいては、ベンチャービジネスには、この「成長エンジン」がなければベンチャーキャピタルなどからのお金は集まらない。それは、マーケットが拡大しているからといったような単純なものでは話にならない。マーケットがなくても、それを作り出していけるような強力なエンジンが必要である。

今日の結論:先の「顧客不在のビジネスモデル」を乗り越え、「成長エンジン」をもつこと。これがベンチャー企業の成功に必要不可欠ではないだろうか。
Commented by jinho at 2005-01-21 11:02 x
2000年頃、ソニーのプレステはハード赤字、(ゲーム)ソフトの黒字でカバーする方法をとりましたがハード更新は外れたときの研究・生産が莫大なので苦労してるはず。ADSLから光に移りつつある今、やはりハード(インフラ)ありきな考えはむずかしいかと。キラーソフトも毎年は生まれないし。ああ、コメント欄足りない(笑)
Commented by yoshinoriueda at 2005-01-21 12:30
「自前主義」を方針として打ち出している最近のソニーの目的は、きっと、収益性の向上だと思うのですが、インフラビジネスのように、顧客囲い込みにも応用できる可能性が残っているとも思えます。どのように使っていくかは、ソニー次第ですが、やはり、ソニーはハードありきなのかもしれません。メーカーというふうに捉えると、モノを売ってなんぼのもんということですからね。

で、おっしゃるとおり、キラーソフトというのは、確かに、常に生み出すことができるようなものではありませんね。これこそ、ミズモノというか、博打というか...

あ、ちなみに、コメント欄、下に延長できますよ。どんどん打ち込んでいけば、こーんな風に.

キタ━━━━\(゚∀゚)/━━━━!!!!

キタ━(゚∀゚)━━━━ッ!!  

(゚д゚)ポカーン

2ちゃんねる検索 http://find.2ch.net/ より

#2ちゃんねるもGoogleに対抗か?!




Commented at 2005-01-22 00:08
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2005-01-22 03:06
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by takekurakenya at 2005-01-22 07:07
同感です。僕はいわゆる大企業に勤めていますが、日銭確保ビジネス+成長エンジンの構図はまったく同様です。

インフラ的なサービスは相応の投資が必要で、かつ当然ながら利用してくれる顧客層がしっかりあって、初めて日銭を稼げますが、いったん前向きに動き始めると変動費が少ないので非常に効率のよいビジネスですよね。

一方、成長には新規ビジネスの企画・事業化が必須です。この種まきのための投資は日銭ビジネスがあるから大胆に挑戦できるのだと思います。わが社もインフラで収益を確保できている間に、しっかり種まきをしておかないと明日はないと思っています。
Commented by yoshinoriueda at 2005-01-22 10:20
インストールベースを確保すること、とMBAの授業などで言われることが、日銭を確保する部分なのかもしれませんね。

ちなみに・・・、ベンチャー企業の場合、この部分もない段階から、成長エンジンによって日銭稼ぎ部分もクリエイトしようとするわけですから、相当の勢いがないと難しい、ということになるわけです。もちろん、勢い(モメンタム)だけではダメなのですが、逆に、そこの部分が分かっている起業家やビジネスプランは、とても評価がたかくなります。
by yoshinoriueda | 2005-01-20 12:25 | シリコンバレーで感じる! | Trackback | Comments(6)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


by yoshinoriueda
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31