電力債の一般担保が外れると...

政府、電力債の担保廃止検討 原発賠償の円滑化狙い 起債条件、新電力と公平に」という記事によると、
政府は電力会社が発行する債券(電力債)に認めている特殊な担保を廃止する方針だ。担保があると、債券の保有者が優先的に資金を回収でき、原子力発電所事故が起きた場合などに被害者への賠償の妨げになると判断した。担保を持たない新電力(特定規模電気事業者)との競争条件を公平にする狙いもある。発送電分離など経営改革を進める場合には例外も検討する。

経済産業省が今秋に議論を再開する電力システム改革専門委員会(委員長・伊藤元重東大教授)で詳細をつめる。来年の通常国会にも提出する電気事業法改正案に盛り込む。早ければ2014年度にも実施する。

 普通の企業が発行する債券は担保がないことが多いが、電力債には「一般担保」という特殊な担保が付いている。特定の不動産を担保にする場合などと違い、発電所や送電線など電力会社の資産全体が対象になる。電力会社の経営が行きづまっても、電力債の保有者は他の債権者に優先して資金を回収できる。

 資金を取りはぐれる恐れが小さいため、電力債は普通の社債よりも金利を低く設定できるとされる。高度成長期の電力不足を解消するため、担保により電力会社が有利な条件で資金調達できるようにして、発電所の建設を促す狙いだった。

 今回、電力債の担保を廃止する理由の一つは再び原発事故が起きた場合、被害者に円滑に賠償できるようにするため。電力会社が事故で巨額の賠償債務を負って法的整理になった場合、被害者の持つ賠償債権には担保がない。電力債の資金回収が優先され、被害者の債権はほとんどカットされる。

原発事故を起こした東京電力の再建策で初めから法的整理の選択肢が排除されたのは、社債が担保で守られ、カットできないため、十分な賠償資金を捻出できない事情があった。政府は将来、原発事故が再び起きた場合に電力会社を法的整理すると決めているわけではないが、柔軟な対応ができるようにする。

 今後の電力自由化をにらみ、新電力と電力会社の競争条件を公平にする狙いもある。仮に新電力が債券を発行しても担保が付くことはなく、資金調達で電力会社より不利になっていた。

 担保廃止によって電力会社の社債は原則無担保となる。市場関係者の間では「原発を保有する電力会社の債券の発行金利は跳ねあがる可能性がある」(大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリスト)との見方もある。

 ただし、電力制度改革を進めるための例外設置も検討する。例えば、電力会社が事業部門ごとに会社を分け、グループに「送電会社」を設立すれば、例外的に送電会社が出す社債には一般担保を認める。政府が推進する風力発電などの普及には、今後も送電線への投資が欠かせないためだ。

 焦点はすでに発行済みの電力債の扱いだ。政府内には発行済みの電力債にも何らかの見直しを加える案もあるが、電力債の発行残高は今年3月末で約13兆円あり、社債市場全体の2割を占める。制度変更の影響が大きいため、慎重に検討を進める。

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とのこと。電力債は、電気事業法で、他の債権よりも優先して弁済を受けることができる「一般担保」が付く。発電所や送電線の維持・建設のために必要な資金調達の手段の一つとして利用されてきた。

電力会社が低金利で資金調達できたので、電気代もそれに応じて抑えられてきた。一般担保がなくなって、金利が上昇することになると、電気代が上昇する要因をつくることになる。

一方、すでに一般担保がなくなっている旧・電源開発の場合はどうか。「原発事故、国の負担カギ 電力債の担保廃止で」という記事によると、
政府が電力会社の債券(電力債)に付ける担保を廃止した場合、電力会社は資金調達をやりにくくなる可能性がある。東京電力福島第1原子力発電所の事故後、投資家は原発事業のリスクの高さを意識しているためだ。原発事故の損失を国と民間事業者でどう分担するかの線引きも重要になる。

 2003年に一般担保をなくしたJパワーでは担保廃止の影響はほとんどない。廃止前と廃止後を比べると、債券利回りの国債に対する上乗せ幅は広がっていない。10年12月の債券は、関西電力や中国電力と同じ低い金利水準で発行できた。ただ、これは事故前の話でしかもJパワーは原発をまだ稼働していない。

 事故後、電力債の発行が停滞している理由は、債券の投資家が財務、事業の両面で原発リスクを意識しているためだ。財務面では巨額の賠償や廃炉の債務を抱え、事業面では原発を稼働できずに燃料費が膨らむ。

 電力会社は発電所や送電線の新設や維持のために多額の設備投資資金を必要とする。担保廃止は、電力会社の資金調達に大きな影響を与える。

 このため、担保廃止の際には、原発事故時の賠償費用を国と民間でどう分担するかという議論も欠かせない。

 国が賠償負担の一部を引き受け、電力会社の負担に上限を設ければ担保廃止の影響は抑えられる。一方で国が前面に出ず、東電のように電力会社がすべての責任を負うならば「原発事業を民間で続けられるのか。国有化すべきではないか」との指摘が出る可能性がある。

 現行の原子力損害賠償法は国の役割が曖昧になっている。本来は今夏までに原賠法を改正するはずだったが議論は深まっていない。電力債担保の廃止は、原賠法の改正論議を促すことにもなる。
とのこと。記事にもあるように、今のところそれほど影響がないのかもしれない。それどころか、一般担保がなくなって、原子力がまともに稼働しないまま発電所の新規建設が進まないと、発電事業者は、あえて需給逼迫の状況を作りだし、電気料金を高騰させるかもしれない。アメリカのカリフォルニア州は、まさにそのような構図で電気料金が高騰した。

だったら、原子力に代わる安い電源を作ればいいではないかという声もあると思うが、石炭火力は「悪者」扱いされていて、日本国内ではなかなか建設が進まない可能性も高い。

一方で、石炭火力については、「原発に代わる電力は 石炭の技術力 世界に」という記事によれば、
原子力発電への依存を減らす場合、何が代わりの電力源となるか。古くて汚れたイメージで見られがちな石炭の技術が日本のエネルギー戦略のカギとなる可能性がある。

 横浜港に近いJパワーの磯子火力発電所は、「超々臨界圧」と呼ぶ発電設備を2基備える。蒸気の温度と圧力を極限まで高め、石炭火力で世界最高の熱効率を達成した。

 タービンの回転はマッハの速度。聞こえるのは「キーン」とジェット機のような音だ。煙突には煙の影もなく、黒煙をまき散らす過去の火力発電所の姿からはほど遠い。

 石炭は原油や液化天然ガス(LNG)に比べ価格が安いが、環境への影響が弱点とされる。二酸化炭素(CO2)の排出量が多く、排気も問題視されるためだ。

 このため日本では同じ火力でも燃料はLNGが中心。震災で原子力発電が止まり、電力各社が慌てて調達したため、そのLNGの輸入価格が跳ね上がっている。これが日本の経常赤字が膨らんだ最大の要因である。

 世界の情勢は違う。米国や脱原発に踏み出したドイツでは、石炭の比率が45%と高い。中国は80%、インドも70%と、新興国は比率が高く、アジアでは今後20年間で石炭火力が2倍以上増えると予測されている。

 国内の「脱原発依存」と海外の「石炭依存」――。ここに日本のエネルギー戦略の道筋が見えてくるのではないか。磯子発電所が象徴する技術力をいかせば、日本の経済安全保障を高める外交政策を描けるはずだ。

 熱効率が高い磯子のCO2排出量は、最もクリーンな化石燃料のLNGよりは多いが、標準的な石油火力に迫る。一方、アジア各国の石炭火力の効率はまだ低く、磯子の7割程度だ。

 中印を中心に石炭火力発電所の増設が続くのは間違いない。環境に負荷が少ない日本の技術と製品への需要は一段と高まる。高性能の石炭火力が新興国・途上国に普及すれば、地球全体でのCO2削減につながる。

 問題は価格競争だが、プラントの輸出企業が相手国で削減したCO2を自分の排出権として使えれば、企業は収益に組み込める。2国間で排出権を共有する制度の導入が、経済外交の優先課題として浮上してくる。

 中印が石炭を買いあさる事態にも備える必要がある。石炭は世界のどこにでもある資源。だからこそ安いのだが、産炭国である中国は2009年に輸入超過に転じ、日本に次ぐ世界第2位の輸入国となった。インドの輸入量も、03年から10年までに4倍以上に増えた。

 日本の石炭の輸入先はオーストラリアとインドネシアが主だ。米国産の安いシェールガスに押され、米国とコロンビアからも石炭の輸出が見込まれている。安定調達のために連携を強めたいが、インドネシア以外とは、日本は自由貿易協定(FTA)を結べていない。

 日本の石炭技術は1960年代の公害の試練を乗り越えて進化した。世界を見回せば、その戦略的な価値が増している。
とのことで、世界にも貢献できるのだが、できれば日本でももっと活躍してほしいものである。

電力システム改革の議論はこれから詳細設計がなされていくが、制度が決まってくると、電気事業者の行動も規定されてくる。しっかりとした見識をもった真の有識者たちが、権益欲にまみれた政治や政府を諌め、日本の将来を見据えつつ議論をすることにより、日本国内で質のいい低廉な電気がこれからも使えるような仕組みがつくられることを期待したい。

  by yoshinoriueda | 2012-08-19 08:39 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

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