シリコンバレーのベンチャー企業は、日本の中小企業とどこが違うのか?
2005年 04月 05日
まず、アーリーステージのベンチャー企業では、売上や利益が存在していないことが多い。「売上は?キャッシュフローは?内部収益率は?」などという質問は、特にアーリーステージのベンチャー企業と付き合う場合、愚問である。同感。
また、必ずしも予定どおりに開発が進むとは限らない。技術上の壁に当たって もがくことは しばしばある。しばしばどころか しょっちゅうだ。「こんなものできましたけど...」というのは日本の中小企業。例えば、樹研工業は世界一小さな歯車を作って存在感をアピールしている。
シリコンバレーのベンチャー企業は、「こうやったら、こうなるはずだ」というところからスタートする。それで、本当にそうなるのかというと、そうなるときもあれば、そうでないときもある。モノを作っていくうえでは、越えなければならないハードルがたくさんあって、一筋縄には行かないのが常だから、当たり前といえば当たり前。
日本の大企業の場合、とくに安定した収益基盤がある会社は、特にその辺りがよく分かっていないかもしれない。計画としては右肩上がりでグラフの線はひいているけれど、常に思い通りになるはずがないのだ。先日のSVJENの講演でカムラン・エラヒアン氏が紹介していたが、MBAの教科書的には、右肩上がりで業績は向上していても、月ベースで見れば かなりデコボコがあって、起業家というのは、そんな浮き沈みを常に経験しコントロール続けなければならないというのである。そんな様子を「カミソリの歯の上に立っているようなもの」と表現していたが、まさにその通りなのかもしれない。(講演のレポートはこちら)
また、オーナーシップの構造も異なっている。日本の場合は、自分の財産を投げ打って事業を始めるというのは普通である。シリコンバレーでもそんなベンチャー企業もあるようだが、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェルなど、第三者が資金を提供していることも多い。そんな資金を提供できるだけのお金持ちがたくさんいるということも、シリコンバレーを構成する一つの重要な要素になっている。そして、その成功者が次の成功者を育てようとするのは、シリコンバレーならではかもしれない。
VCに関しては、ブログ:Sotto Voceのエントリーで紹介されていたような「"The Unified Theory of VC Suckage"(「VCのダメさ加減に関する統一理論」)」というのもあるが、これは、おそらく東海岸のVCでその傾向が強いだけ、シリコンバレーの優良VCの場合は、もうちょいとはマトモではないかと信じている今日この頃である。
シリコンバレーを経験した日本人というのはたくさんいると思う。そんな人たちは今どうしておられるのだろうか?そんな話も話題に上がっていた。すっかり日本的に馴染んでしまったのかもしれないし、ご自身で起業されているという方々もおられるかもしれない。いずれにせよ、いろいろと見て、それを感じないと、実感を伴った形では説明もできないし、同じような仕組みを作っていくことも難しいのかもしれない。ただ、もし、すっかり日本に馴染んでしまっているなら、それは少し残念である。
現在寄稿しているSVJENのベンチャーキャピタルベーシックの第3回目の記事では、「ビジネスプラン」をとりあげ、日本が公的に支援していることも触れたけれど、実際、今振り返って考えると、シリコンバレーでどれだけ通用するのかよく分からない。もしかしたら、シリコンバレー的なベンチャービジネスを理解していて、自分でも経験があるという人もおられるかもしれないから、一概にすべてが通用しないとは思わないが、これまで、たくさんの日本人がシリコンバレーを経験していても、日本は大きく変わっていないという事実を見ると、あまり明るい希望は持てないのかもしれない。
いずれにせよ、日本の中小企業とシリコンバレーのベンチャー企業は明らかに異なる。同じようなものだという目で見るのではなく、はじめから全く違うものだと思って見たほうがいいのかもしれない。
今後、この点については機会があるたびに振り返ってみたいと思う。
自分も日本に帰国して1年が過ぎ、もう一度、シリコンバレーに戻ることも考えています。
どんどん、情報を発信してください! 刺激にもなります ^^)