複雑かつ不確実性を含む原子力(『経営センスの論理』(楠木建))
2013年 09月 16日
例えば、筆者は、日本は「複雑性」は高いけれど、「不確実性」は低いという。しかし、「原発事故があれほどシリアスな問題になったのは、それが複雑のみならず極めて高い不確実性を多く含んでいた(いる)からだろう」ということも述べている。さらに、市場が「不確実性」に対処するのに役立つ一方、政治が「複雑性」に対処するのに役に立つという。この主張は抽象的だが説得力があると思う。
原子力について考えると、総括原価主義もひとつの市場の形態だとすれば、市場の作り方を工夫することにより不確実性を排除し、政治により複雑な利害関係を整理する必要がある。
日本にとっては、今の子供たちの世代のためには、原子力は必要といわざるを得ない状況にあると思うし、今、原子力というエネルギーを日本が手放すのは、かなり惜しいと思う。しかし、曾孫の世代になるとどうか。エネルギー問題は解決されていて、原子力エネルギーを必要としているのかどうかは分からない。そこは、政治が見通して、時として非情な決断をしなければならないのかもしれない。
とにかくも、『経営センスの論理』(楠木建)は、久しぶりにオススメの一冊であることに間違いはない。