複雑かつ不確実性を含む原子力(『経営センスの論理』(楠木建))

複雑かつ不確実性を含む原子力(『経営センスの論理』(楠木建))_a0004752_19372246.jpg『経営センスの論理』(楠木建)は、経営学を学んだ人、40歳前半の世代、そしてもしかしたら麻雀が好きな人も楽しめる一冊かもしれない。バカ話(といったら失礼かも知れないが)や、さまざまな示唆に富む話が織り交ぜられていて、一気に読み干せる一冊である。著者は、『ストーリーとしての競争戦略』という本も上梓されているが、なかなか筋のいいセンスの持ち主だと感じる。

例えば、筆者は、日本は「複雑性」は高いけれど、「不確実性」は低いという。しかし、「原発事故があれほどシリアスな問題になったのは、それが複雑のみならず極めて高い不確実性を多く含んでいた(いる)からだろう」ということも述べている。さらに、市場が「不確実性」に対処するのに役立つ一方、政治が「複雑性」に対処するのに役に立つという。この主張は抽象的だが説得力があると思う。

原子力について考えると、総括原価主義もひとつの市場の形態だとすれば、市場の作り方を工夫することにより不確実性を排除し、政治により複雑な利害関係を整理する必要がある。

日本にとっては、今の子供たちの世代のためには、原子力は必要といわざるを得ない状況にあると思うし、今、原子力というエネルギーを日本が手放すのは、かなり惜しいと思う。しかし、曾孫の世代になるとどうか。エネルギー問題は解決されていて、原子力エネルギーを必要としているのかどうかは分からない。そこは、政治が見通して、時として非情な決断をしなければならないのかもしれない。

とにかくも、『経営センスの論理』(楠木建)は、久しぶりにオススメの一冊であることに間違いはない。
by yoshinoriueda | 2013-09-16 19:40 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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