「国際枠組み不要論」の次は、「二国間オフセット・クレジットメカニズム(JCM/BOCM)不要論」?!
2013年 11月 21日
「国際枠組み不要論」のポイントは、「技術導入を強制する前に、技術革新を促進しろ」ということだ。これは、これまでこのブログでも常々主張し続けていることと同じスタンスである。日経エコロジーの記事では、再生可能エネルギー財団の理事長であるジョン・カンスタブル氏のコメントとして、次のようなものを紹介している。
この10年、欧州では再エネ電力の固定価格買い取り制度(FIT)に失敗し、痛みを伴う経験をしました。どの国でも費用対効果が低い高価格の技術導入を強制した。...消費者は電力料金として高い負担を強いられ、政府への反発を強めています。...
現在の携帯電話のような高機能と小型化を実現し、手に入れやすい価格のヒット商品に仕上げたのは企業による自発的な努力と技術革新のたまものです。政府が普及を強制しようとしたら、魅力的な製品にならなかったでしょう。
既存技術や製品の普及を促す補助金が使われがちです。しかし、技術の発明、技術革新に政策資金を投じ、より低炭素で、より低コストの技術を生み出すことに使うべきです。
再エネ財団の理事長が、FITは失敗だったということを言っているところもおもしろいのだが、それ以上に、補助金を技術普及に使うのではなく技術革新に使うべきといっているところが、今日のポイント。要するに、補助金は、技術革新に使うべきであって、技術普及に使うべきではないということだ。
企業が「自発的な努力」を重ねるのは当然。市場では、企業はそのような努力を重ねなければ生き残ることができないからだ。逆に言えば、それが健全な市場というものだろう。
そう考えてみると、今の二国間オフセット・クレジットメカニズム(JCM/BOCM)も「不要」ということになるのかもしれない。(ちなみに、JCMはJoint Crediting Mechanismの略であり、BOCMはBilateral Offset Credit Mechanismの略。)今の仕組みでは、技術の普及に補助金が使われることになっており、「日本の削減目標の達成に活用」というところで、税金を使うことを正当化しようとしている。しかも、「削減目標」といっているところ自体が、数値目標のトップダウン型の亡霊を引き摺っているので、概念自体、もはや旧世代の産物となりつつある。
韓国が電気代に補助金を入れることで企業を誘致しようとしてきたが、もはやそのような仕組みは持続可能ではなくなった。それと同じように、二国間オフセット・クレジットメカニズムも、今のままでは、資金が尽きたらおしまい、つまりカネの切れ目が縁の切れ目というわけだ。官民あわせて11兆円の温暖化対策を国内外で進めるという方向も打ち出されているため、補助金の枠はそれなりにあるのかもしれないが、もう少し冷静に見直し、持続可能なものを考える、あるいは技術革新に注力するという方向転換が必要なのではないだろうか。