戦略と実践を一体化させるDesign Thinking
2005年 07月 29日
デザインを本業としているIDEOは、以前の「IDEOから学ぶイノベーションの極意!」というエントリーで紹介したとおり、イノベーションを成長のエンジンにしているシリコンバレーの会社である。
D-SchoolやIDEOで使われている「デザイン」というのは、単なる「意匠」ではない。プロトタイプを作ってみる。それを用いてテストマーケティングをしてみる。そうするサイクルを回すことで、問題を見つけながら、解決しながら、前に進むのである。そんなことを全て含んでいる。
この考え方は、「きっちりとした作業範囲があり、どうやるかということまで計画されていて、後はそれをいかに実行するかで勝負がきまる」というこれまでの考え方とは、180度異なる考え方である。
戦略と実践は分けることはできないのではないかと、昔から思っていた。戦略を立てる人と実行する人が別というのは、情報の精度が高く、時間の経過を無視することができるならば、有効なのかもしれないが、情報など限られているのだし、時間は常に流れているのだから、戦略は実践しながら練られていくものだと思うのだ。以前、シリコンバレーで出会った日本人にそんな話をしたら、それは違うといわれたことがある。戦略と実践は別という考え方を否定はしないけれど、やはり、戦略と実践は分けることはできないと思う。
「経営は「実行」」という本がある。英語のタイトルは、“Execution”。executionという言葉の響きは、「実行」という要素が色濃く思える。しかし、「デザイン」の考え方では、経営はexecution(実行)ではなく、practice(実践)なのではないだろうか。特に、何が問題か曖昧でよく分からなかったり、その曖昧な問題が時間とともに変化したりすると、practiceしかないと思える。
分析して、論理で固めて、効率を追い求めながら実行するのではなく、市場に入って正しい直感を頼りに、仮説を創造し、観察によりその仮説を磨き、実践する。なんだか言葉遊びのようだが、背景にある考え方は、180度異なっていると感じる。そして、これを実行するためには、鍛えられた「個」が必要になると思う。
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日本で過ごし始めてまもなく約1ヶ月。さまざまな固定観念、いわゆる「日本の常識」に囲まれて、違和感を感じながら過ごしているのだが、日がたてば、こんな違和感もなくなってしまうのだろうか?ふと、そんなことを感じた。
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「プロトタイプを作ってマーケティング」・・・。私の勤める会社のイノベーション・ラボというグループがIDEOと組んでまさにこのモデルを実践していました。デザイン好き、IDEO好きの私は、そのグループ所属の同僚を非常に羨ましく思ったものでした。その後数年経った今、何の消息も聞かないので、プロジェクトは立ち消えになったのでしょう。残念ですが。以前紹介されていたイノベーションの本も是非読んでみたいと思っています。