P・F・ドラッカー「日本画の中の日本人」を読んで
2005年 09月 26日
絵心がないため、よく分からないかなあと思って読んでみたのだが、なかなか面白かった。例えば、
西欧の絵画は、主として幾何学的な構図で描かれている。・・・中国の絵画は代数的である。というのは均衡を重視するからである。・・・一方、日本の絵画はこれとは対照的に、トポロジカル(位相数学的)である。・・・日本の美術は、絵画、陶器、漆器などすべてを通じて共通な流れがあるが、中国ではそれぞれ独立している。それは日本の美術が、幾何でも代数でもなく、トポロジ-、つまり「デザイン」的なアプローチをとっているからではないだろうか。という部分は、幾何、代数、位相という数学の3つの分野の特徴を捉えた見方である。トポロジーというのは、Wikiでは位相幾何学という形でまとめられているが、「連続性」に重きが置かれた考え方である。たしかに、日本の美術には、連続性のようなものがあり、ピカソのような断続的に見えるものとは全く異なるし、モザイクなどのような断片的に見えるものとは全く異なる。また、
室町時代の南画家は、中国から、技法をはじめ、画題、構図などを学んだが、それを自分のものとして消化し、日本独自の画風を構築した。このように外国文化を受け入れて日本化する才能は、日本の歴史の主流をなしている。・・・日本人は、日本的価値観の効用のためには、外国文化をどう消化すべきかを読み取る直観力を身につけている。という部分で述べられている「直観力」は、場の空気を読んだり、雰囲気を察知するという場面でも多用される基本的なスキルであり、同質性の高い日本という国で、日本人が得意としてきたものなのかもしれない。そして、最後のほうに述べられている
日本の伝統を貫いている「知覚力」は日本の経済的、社会的発展の基盤となっているものと考えられる。そのような知覚力によって、日本は政治、産業、文化などあらゆる面における海外のエッセンスを把握し、日本化してきたのである。結論として、日本のもっとも重要な特質は「知覚力」であるといえよう。という部分は、日本人を大いに励ましてくれるような気がした。別に国粋主義者ではないけれど、たしかに、日本人は、優れた知覚力によって、「『流れ』の中の本質」のようなものを捉えてきたのかもしれない。もしかすると、欧米や中国をはじめとするアジアの国々に対して優位性を保てるのは、そこなのかもしれない。
参考:位相について学ぶには、以下の本が入門としてオススメっ!
「位相への30講」 (志賀浩二、朝倉書店)