最期のお別れに
2016年 10月 01日
兄弟姉妹が多いせいか、正月には親戚が集まって賑やかな時間を過ごしていたが、そのような折りなどに様々なアドバイスをいただいた。
今でも覚えているのは、「正義」という言葉の意味を問われたことだ。何が正しいことなのか、という本質的なことを考えさせられた。
そのとき答えは出なくて、伯父が母に「あいつはよく考えている」と言っていたということを、母から聞かされた。
未熟者であっても、全力でぶつかっていく気概を評価されたような、一人の人間として認められたような、そんな気がした。
中学入学の際、万年筆を贈ってくれた。細身のシルバーでメタリックなもので、ブルーブラックのインクだった。
高校時代、吉川英治の『三国志』が教材になり、母が出版社に勤めておられた伯父に頼んで、少し安く入手してもらった。母校のすぐ近くに勤めておられたので、昼休みに勤務先まで受け取りにいった。
そういえば、母校の数字の先生が執筆された本を頂いたこともある。授業が再現されているようなところもあり、なかなかいい本だったという記憶がある。
大学進学の際にもアドバイスをいただいた。夏目漱石や三島由紀夫をはじめとした日本文学から、ヘミングウェイなど海外文学までさまざまな文学にふれ、また般若心教や仏教などの宗教にもふれ、文学部も選択肢に入っていたが、自然科学の面白さも伝え続けてくださった。結果として理系の道に進んだが、伯父のアドバイスも一助となったところもある気がする。
そんなこんなで、甥の中では可愛がっていただいた方ではないかと思う。
祭主と親交があったせいか、伯父の人柄を「明るい」、「好奇心旺盛」、「行動の人」といった形で紹介されていたが、まさにそういう印象の人だった。
久しぶりに親戚が一堂に会し、年長者から戦中の体験談や兄弟姉妹の間の話などを聞くだけで時間が過ぎてしまったので、そんな話をすることもできなかったけれど、こういう形で記すことで、お別れの言葉としたい。