「同じ資格を持つものとして恥ずかしい」という発言を聞いて

中小企業診断士というのは、5年毎に資格を更新しなければならない。そのためには、実務研修や理論研修が必要になる。実務のほうはいろいろな方法があるのだが、理論のほうは、理論研修を主催している団体の研修を毎年受講する必要がある。(参考:中小企業診断士更新登録要件のご案内@社団法人中小企業診断協会(平成18年10月)

研修の受講方法はいくつかあるが、今回は、「実践クオリティシステムズ」が実施する集合研修を受けに行った。中小企業診断協会が実施する研修の場合は、ただ座って話を聞いていればいいだけだったが、こちらの集合研修では、中小企業白書のポイントが紹介された後、5~6人のグループに分かれて、とあるケースを分析するという作業を行なうことになっていた。

一方的に知識を付与されるだけの研修より、自分の頭で考え、他人の頭を使ってさらにヒントを得るという作業は、やっていて楽しいものである。実際、今回もたくさんの気づきをもらったような気がする。

ただ、そんな作業自体が面倒であるという参加者もいるようで、たまたまグループの中のある男性が、「自分は、こんなケースはやったことがないので全くわからない」「考えても仕方がない」「早く議論を終わらせよう」といった発言をしていた。

個人的には、「中小企業診断士という資格を取得しても、それは単なる資格にすぎず、それを如何に活かしていくかということろが本当は大切であり、知らないことを知り、考えていくということは、自己を研鑽し、可能性を伸ばしていく機会なのに、まあなんともったいないことだ...」と思っていたが、そこは私自身がオトナ(?)なので、自分の価値観を相手に押し付けたりせず、ただ、邪魔をして欲しくないなぁ...と思っていた。

1時間半くらいあるディスカッションの途中、その発言をした男性は、モバイルパソコンを開いて、なにやら作業をしていた。さすがにヘンだと気づいた講師が、その男性を外に呼び出し、注意したようで、その後は、ブスっとしたまま、テキストを見ていた。

ところが、ディスカッションの最後のほうになって、同じグループの別の男性が、先の消極的な発言をしていた男性に意見を求めた。「あなたは何か意見がないのか?」と。

「別にない」という答えに、発言を求めた男性が怒りを抑えつつ言った。
みんな忙しい中、時間をやりくりして出てきているんです。あなたがどういう姿勢でこの研修に望むのかはあなたの勝手ですが、もっと前向きに取り組んで、楽しんだほうがいいんじゃないですか?そもそも、無理して資格を更新する必要はないんじゃないですか?あなた、もう帰ったほうがいいですよ。正直、同じ資格を持つものとして恥ずかしいですよ。
それ以上、別に言い争うわけでもなく、ただ淡々とディスカッションをこなし、時間が過ぎていったが、同じ資格を持つものとして恥ずかしいという発言は、その後、心のどこかに引っかかったまま残った。

なぜ残ったのかということをいろいろ考えてみたが、結局、よく分からない。ただ、個人的には、偶然にも1回目の試験で合格してしまったというせいか、中小企業診断士という資格に対して強い思い入れもないし、それを誇りに思うこともないのだが、もしかすると、「同じ資格を持つものとして恥ずかしい」という発言をした人は、この資格に対してそれなりの誇りと自負を持っていたのかもしれない。

「同じ大学の卒業生として恥ずかしい」とか、「同じ企業に勤めるものとして恥ずかしい」とか、「同じファンとして恥ずかしい」といった言い方もあるのかもしれない。これらはすべて、ある集団に属しているか、いないか、という基準があり、さらに、そのある集団に属している人は、こうあるべきだという理想像があることからくる発言に近いものがある。

個人的には、そんな一括りにしてラベルを貼るというのが大嫌いなのであるが、ただ、せめて中小企業診断士として恥ずかしくないような態度と姿勢と能力を維持したいと感じた。

知識は本からでもネットからでも得ることができる。ただ、こんな人間模様は、リアルな空間の中でなければ見ることができない。まさに大切な気づきを与えてくれた一件だった。
 
by yoshinoriueda | 2007-12-08 23:50 | 思うに・・・ | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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