ニュースクリップ:品質安定・コストに課題

2008/08/18 日経産業新聞 P.8
関西電力はシャープと共同で堺市に世界最大級の太陽光発電所を建設することを決めた。7月上旬の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)では2050年までに世界の温暖化ガスの排出量を半減する目標を共有。太陽光発電の普及度も成否にかかわってくる。ただ、悪天候時の電力供給方法や割高な発電コストなど課題は多く、商業化までの道のりは険しい。

 両社は臨海部の2カ所に発電設備を設置し、発電出力は計2万8,000キロワット、二酸化炭素(CO2)を年間約1万トン削減する。うち1カ所は関電が単独で建設。国内電力会社として初めて一般の送電線につなげ、11年度にも一般家庭や工場などに電力を送る計画だ。

 「太陽光発電の課題を検証、解決する研究拠点にしたい」。関電の森詳介社長は同発電所をこう位置づける。電力会社の使命である高品質で安定した電力を送るには、周波数と電圧を適正に保つことが絶対条件となる。

 周波数とは電力消費量と発電量のバランスで、関西では60ヘルツと定められている。このバランスが大きく崩れると、工場では製品の品質がばらつくため、電力会社は周波数を一定の範囲内に保つように厳密に調整している。

 太陽光発電は天候次第で出力がすぐ変わる。雨天時に電力系統につなげた場合は火力などで出力を補てんする必要があり、他の電源も常に発電余力を持たせた運転を強いられ「極めて非効率で経済性が悪い」(電力流通事業本部・系統制御グループの大久保昌利チーフマネジャー)。

 逆に好天だと、他の電源の出力を抑えないといけない。ただ、抑制できる出力は限りがある。太陽光発電の超過電力をためる蓄電池などの設備を置くため、コスト負担はさらに増す。天候状態に合わせ、太陽光発電の出力変動を分析し、効率的に安定した電力供給方法を確立できるよう検証する必要がある。

 電圧も同じだ。一般家庭に送る電圧がぶれれば、エアコンなどの機器類に障害が発生。状況に応じて電圧を補給する「調相設備」を増設し、適正な電圧を維持するなどの対応が求められる。 太陽光発電は昼間の稼働に限られるのも難点。今回、関電は20ヘクタールの土地で1万キロワットを出力する。76ヘクタールの土地で200万キロワットの出力を持つ堺港火力発電所(堺市)と比べれば効率の差は歴然だ。

 現在、太陽光発電のコストは1キロワット時当たり46円程度と原子力発電に比べ9倍以上も高い。グループ経営推進本部の竹中秀夫マネジャーは「コスト負担を電力会社、国や自治体、個人でどう分担するかが普及のカギを握る」と指摘する。

 太陽電池の価格引き下げなどで、国は10年度までに23円程度まで下げる目標。ここまでくれば太陽光発電が一気に普及する可能性もある。

 再生可能エネルギーの使用が広がれば、日本の地球温暖化対策は大きく前進する。関電は先駆者として太陽光発電の技術やコスト課題に明確な解を打ち出せるかどうか。課された責任は重い。
参考記事:
「堺市臨海部におけるメガソーラー発電計画」の推進について
by yoshinoriueda | 2008-08-18 14:34 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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