原子力の日(あと30分)
2008年 10月 26日
電気事業連合会の試算によると、国内の原子力発電所の稼働率が1%向上すれば、年間約300万トンの二酸化炭素(CO2)を削減できるとしている。エネルギーの安定供給と温暖化防止を両立できる手段として、世界でも原発の再評価が急速に進んでおり、米国をはじめアジア、中東諸国で建設計画が次々と浮上している。やはりこの国の電力は、当面は原子力に頼るしかないのかな。
■米国、アジアなど建設ラッシュ
海外では原発の計画、建設が急速に進んでいる。米国だけでも30基以上が計画され、インドや中国をはじめとしたアジアや中東諸国でも急速に新規建設計画が浮上している。エネルギーの安全保障や、電力供給の温暖化対策への大きな効果がその背景にある。
原発は発電する際に、CO2(二酸化炭素)、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)を排出しないため、これまで原発に消極的だった米国や欧州での世論は大きく変化している。また、原油高や中国などアジアの経済発展によるエネルギー不足への危機感から、自国のエネルギーの安全確保を図ろうという各国の思惑も、建設ラッシュの大きな要因になっている。
原発の稼働中基数、出力の統計をみるとトップは米国。2位がフランス、3位が日本。しかし、エネルギー全体に占める原子力比率は米国が20%程度に対し、フランスは約80%、日本は30%程度と大きく異なる。
日本原子力産業協会の調査によると、2008年1月1日現在で、世界で運転中の原子炉は435基、合計出力は3億9224万1000キロワット。合計出力は前年を約500万キロワット上回り過去最高となった。
06年には中国、インド、ルーマニアで4基が新たに稼働した。建設中の原子炉は43基で3877万2000キロワット。中国、ロシアでの大規模着工の影響を反映して大幅に拡大しているという。
■定期検査の間隔 24カ月まで延長
一方、国際協力銀行などが統合して今月1日に設立された日本政策金融公庫(政策公庫)では、原発建設プロジェクトに限って、先進国向けの融資が認められることになった。前身である国際協力銀行は、先進国向けのプロジェクトに融資できなかった。米国の原発プロジェクトなどへの融資が想定されており、国内原子力産業の活性化につながる。
原発の稼働率向上は、地球温暖化対策を進める上でも重要となる。日本にある原発55基の稼働率は最近では70%程度と低迷している。経済産業省原子力安全・保安院は、原子力発電所の定期検査の間隔を現在の13カ月から最長24カ月まで延長する方針を打ち出した。原発の稼働率向上につながり、地球温暖化対策としても期待されている。
■ウラン枯渇も課題に 期待はプルサーマル、高速増殖炉
原発はエネルギーの安定供給と温暖化防止の切り札として注目されているが、燃料となるウランは85年ほどで枯渇するといわれている。その解決策として開発が進められているのが、プルトニウムやウランを軽水炉で再利用するプルサーマル発電、「夢の原子炉」といわれる高速増殖炉の早期実用化だ。
高速増殖炉は、核分裂で飛び出してきた中性子を、そのまま次のウラン238に衝突させて、運転しながら次々と核燃料プルトニウムをつくる原子炉。実用化できれば燃焼させた以上のプルトニウムが炉の中で生産できるようになる。
原発で使い終わった使用済み核燃料には、再利用できるウランやプルトニウムが残っている。それを再処理によって取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工した上で軽水炉で再利用するのがプルサーマル。佐賀県玄海町にある九州電力の玄海原子力発電所では、2010年の稼働を目指して日本初となるプルサーマル発電の準備を進めている。
福井県・敦賀半島にある高速増殖原型炉「もんじゅ」は、1995年にナトリウム漏洩(ろうえい)事故を起こし、以来12年以上稼働できなかった。現在はプラント確認試験が行われ、運転再開は来年2月を予定している。その後、約2年半かけて性能試験を行った後、本格運転に入る工程で進められている。
すでに原子燃料サイクルが確立されているフランスのように、日本もウランを有効利用して、エネルギーセキュリティーに備えるのが現実の姿だと感じます。
原子力は使わなくて済むならば、使わないほうがいいと思うけれど、有効な代替策は現在のところありません。
私達は、原子力から逃げるのではなく、原子力の利用に立ち向かっていかざるを得ないような気がしますが...
ちなみに、「発電原料の多様化=エネルギーセキュリティー」というのは一理あるものの、原子燃料サイクル確立は、資源の有効利用であり、エネルギーセキュリティ向上に資する方策です。
東北電力のHPにプルサーマルに関する分かりやすい説明がありましたので、ご参考まで。
http://www.tohoku-epco.co.jp/electr/genshi/pul/fq/03.html
プルサーマルを実施するメリットは、大きくは以下の通りです。
《エネルギーの安定供給》
日本のエネルギー自給率はわずか4%であり、主要先進国の中では最低の自給率となっています。国内の原子燃料サイクルが確立すれば、輸入したウラン資源を準国産エネルギーとして使用できることから、エネルギーセキュリティや供給安定性が一層強化されます。
《ウラン資源の有効活用》
使用済燃料を再処理し、プルサーマルを実施すると、再処理せずに使用済燃料を直接処分するよりも、ウラン資源が10~20%ほど節約できます。
《高レベル放射性廃棄物の低減》
使用済燃料を直接処分する場合、使用済燃料そのものが高レベル放射性廃棄物となります。しかし、プルサーマルを行うために使用済燃料を再処理する場合、再利用できるウランやプルトニウムと使えない廃棄物に分別できるため、高レベル放射性廃棄物の体積にして、直接処分する場合の30~40%に低減できます。
《平和利用》
略