カテゴリ:ショートストーリー他( 7 )

 

その微笑みに癒されて

オフィスで仕事をしていると、IDカードを吊るした緑色の紐を首から下げ、体の前に書類を抱えた女性が、部屋に入ってきた。男性がほとんどの職場に、女性が入ってくるだけで、空気が変わるような、明るさが増すような、そんな雰囲気だった。

白いブラウスの上に薄いベージュのカーディガンを羽織り、きれいなインディゴブルーのジーンズを穿いていた。少しうつむき加減の表情だったが、全体の雰囲気から、一瞬でその女性が彼女であることに気がついた。卒業以来、ほとんど会っていない同級生だが、大勢の人の中から彼女だけを識別できる自分に驚いた。

同僚が座る後ろにあるロッカーやバインダーに綴じられた書類を見ようとして、ふと目線を動かした彼女は、窓際にいる私を捕らえたようで、一旦行き過ぎた目線がこちらに戻ってきた。彼女のほうも、私に気づいたようだ。

書類の収納状況などのチェックをしながら、窓際にある私のデスクの斜め前まで歩いてきた。彼女は、昔と変わらない柔らかな微笑みを浮かべていた。

「何やってるの?」
「うん、備品や書類の収納状況のチェック(^_-)」

交わしたのはそんな会話だっただろうか。長い間会っていないにもかかわらず、偶然会ったにもかかわらず、「久しぶりだね」という言葉を交わすまでもなく、ただ、淡々と日常の中に溶け込んで行った。利害を挟まない時代に出会い、お互いに相手のことを良く理解し、固い絆、信頼関係のようなものがあるからだろうか。あるいは、ただただ、彼女の柔らかな微笑みに心を癒されたからだろうか。

彼女は、微笑みながら、また壁際のロッカーや書類の山を確認していった。彼女と交わした口調から、同僚が興味深げに彼女のことを目で追いかけていた。


そんな夢の中の物語。仕事の中でもがいている自分が、誰かに救いを求めたのだろうか...
 
 
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  by yoshinoriueda | 2014-04-20 08:41 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(0)

いつか一緒に

朝、曇り空を見上げながら、家を出た。今日は、日本の南のほうで皆既日食が見られ、本州でも部分日食が見られるということで、朝のニュースは各地の様子を伝えていた。

職場に到着しても空は厚い雲に覆われたままだった。大阪では、11時過ぎに部分日食が最大になるということで、11時前からビルの外に出て、空を眺めてみた。


相変わらず空は灰色だ。


太陽がどこにあるのかさえ分からない。


もう、当分見ることはできないのかという思いがあって、一生懸命、雲の間を探してみたのだが、飛行機が雲の下を飛んでいるのが見えるくらいで、太陽は全く見えない。


部分日食が最大になる時間を過ぎても、空はべつに暗くもならなかった。


そして、ショーは終わった。のだろう。きっと。


次は、大切な人と一緒に日食を見てみたいものだ。次の日食が日本で見られるのは、26年後。それまで、その夢をとっておこう~


参考:<皆既日食>奇跡の6分30秒 金星や水星が姿現す
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  by yoshinoriueda | 2009-07-22 21:55 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(0)

Happy Birthday to You!

君はとても小さくて、かわいい赤ちゃんだったよ。

モノ覚えはあまりよくないけど(^^; それは今でもはっきりと覚えているんだ。

赤みをおびた寝顔は、まるで桃のようだったんだよ。

僕は、君が生まれてきてくれて良かったと思った。

そして、自分の人生は君のためにあったんだと思った。

今、なにをしてあげることができるのか、よく分からない。

ただ、自分が毎日がんばって生きているということを伝えたい。

そして、君にも毎日がんばって生きてほしい。

お誕生日おめでとう!
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  by yoshinoriueda | 2006-12-16 23:21 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(3)

伸びやかで素敵な想いが持てる空であることを願う

爆弾が落ちてくる空を僕は知らない。今はきれいな夕焼けに染まっているけれど、昔は、この空からも、爆弾が落ちてきたのかもしれない。

そして今も、この地球上のどこかの空は、大切な人を失った悲しみに満ちているのかもしれない。また、どこか別の空は、能天気なくらいの楽しさや、弾けんばかりの嬉しさで満ちているのかもしれない。

この空は、この先、どうなるのだろう。

一青窈が「ハナミズキ」の中で「空を押し上げて 手を伸ばす君 ・・・ 君と好きな人が 百年続きますように」と歌うように、そんな伸びやかで素敵な想いが持てるような空が、ずっとずっと世界に広がっていることを願う。

そして、そんな空の下に、僕や僕の大切な人たちが生きていくことができることを願っている。どうか、そんなささやかな願いが叶いますように...

***

 ♪ 一青窈・disc
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  by yoshinoriueda | 2006-10-15 22:02 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(2)

ヘッドワーク、フットワーク、ボディーワーク

あの頃、僕は、思考の中の世界に生きていた。スポーツをしていても、瞬時に頭の中で計算していた。すべてが計算できると思っていた。そして、すべてのことがらは論理(ロジック)で片付けることができると思っていた。

そんな頃から月日は流れ、その中で、さまざまなことを経験した。泥臭いこともやってきた。いくつかの修羅場もあった。駈けずり回ってなんとか今までやってきた。

先日、5年ぶりに会った旧友が言った。
「今は、頭だけでなく、体全体を上から下まで使って、仕事をしてるんだね。」
そうかもしれない。

確かに今は、頭だけでなく、足を使い、さらに体全体で、自己表現するように仕事をしているのかもしれない。ようやくここまできたといってもいいのかもしれない。

a0004752_19372315.jpgだから、「経験は無駄にはならない。どう活かすかは自分次第だ。」といったようなことを、本気でアドバイスすることができる。MBAをとるために、今、必死になって勉強している知人にもそんなアドバイスをしてきたが、果たしてうまく伝わっただろうか?

今日も日が暮れていく。でも僕は、また、今日も一日分、ちょっとだけ成長したような気がする。どこにいくわけでもない。何をするためでもない。ただ少しだけ、少しだけ。
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  by yoshinoriueda | 2006-10-08 18:43 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(0)

5年前

5年前の今日、君は生まれた。

愛に包まれて、君は生まれた。

僕は本当に嬉しかった。

君の元気な泣き声に励まされた。



そして今、僕は君に何を伝えることができるのだろう。

今は、そばにいて見守ることはできないけれど、

君のことはいつも忘れることはない。



どうか元気でいて下さい。きっといつか会いにいくから。

Happy Birthday to You!

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  by yoshinoriueda | 2006-10-02 20:00 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(1)

通勤電車で見た女性から連想したこと

飛び乗った通勤電車は空いていたので、シートに座ることができた。「ユリシーズ」を読み始めると、綿矢りさの「インストール」を読んだときと同じような感触を覚えた。それは、これまで馴染みのある小説やビジネス書とは少し違った世界だった。

そんな世界に浸っていると、くすんだピンク色のきれいなパンツが視界に入った。ふと目を上げると、R by 45rpmの紙袋とカバンを両手で持つ女性が立っていた。

グレーと黒のノースリーブを重ね着したその女性の腕は、きれいに筋肉がついていて、こんがりと小麦色に日焼けしていた。その左腕には、金色のデジタル時計が巻かれており、胸には、ユダヤ人の保護と安全を象徴したダビデの星をモチーフにしたネックレスが揺れていた。

整った顔立ちからは、男性的な強ささえ感じられる。華奢に見えるボディーラインの内側には、力が溢れていそうだった。そんな女性を見て、片岡義男の小説に出てくる女性を連想した。小説のタイトルは覚えていないけれど、体を鍛えた女性がジムから出てきたところを描写していたと記憶している。

そんな記憶とともに、その小説を読んでいた中学や高校時代の記憶がよみがえった。そして、年月は流れ、人並みにいろいろな経験を重ねてきたことを感じた。これまでの経験は無駄ではない。最近特にそう感じる。

蒸し暑い空気に満たされた大阪の町は、普段遠くに見える山が見えないくらい白く霞んでいて、歩いているだけで汗が流れ落ちる。汗をかきながら、まもなく始まる今年最後の四半期も頑張ろうと思った。
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  by yoshinoriueda | 2005-09-20 11:51 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(0)

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