小沢君、キミこそ腹を括れ!
2010年 07月 31日
小沢鋭仁環境相は30日、再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が比較的高い価格で買い取る「固定価格買い取り制度」に関し「経済界も腹をくくって、脱化石燃料化の社会に向けて日本は頑張るという気持ちを持ってほしい」と述べ、導入への理解を求めた。経済産業省が今月、買い取り費用を電力会社が電気料金に上乗せする案を示し、これに日本経団連会長が反対の意向を示したことを受けた発言。とのこと。小沢君、キミのほうこそ、そろそろこんな
不公平で効果の少ない政策を諦めることを腹括ったほうがいいんぢゃない?!
ドイツ大手シンクタンクが固定価格買取制度を批判
-莫大な助成金にもかかわらず温暖化防止や雇用創出での効果は薄い-
固定価格買取制度(フィードイン・タリフ(FIT))を批判してきたドイ
ツの大手シンクタンク「ライン・ヴェストファーレン経済研究所(RWI)」
は、2009年11月に発表した「再生可能エネルギー推進による経済的影響」と題
する論文で、FITは太陽光や風力等の買取に向けた助成金が莫大となるだけ
でなく、温室効果ガス削減や雇用創出、エネルギーセキュリティー向上の効果
の面でも非効率と批判を強めています。
なかでも温室効果ガスの削減に関しては、欧州排出量取引制度(EU-ET
S)と比べた場合の費用対効果の悪さにとどまらず、電力起源のCO2に対す
る削減インセンティブが働くEU-ETS以上の追加的な削減効果は殆どない
と痛烈に批判しています。
ドイツを範として世界的に普及が進んでいるFITですが、RWIは、「一
部が評価しているような輝かしい制度ではなく、莫大な助成金を伴うにもかか
わらず経済・環境の両面で効果が薄い失政である」と酷評するとともに、
「FITを導入している他の欧州諸国の政策決定者は、ドイツのFITを模倣
して導入するのではなく、競争力の弱いエネルギー源の支援策を精査すべき」
と提言しています。
========
1.FIT批判論文の発表
○ ドイツの大手シンクタンクである「ライン・ヴェストファーレン経済研
究所(RWI)」は2009年11月、「再生可能エネルギー推進による経済的
影響」と題する論文を発表。このなかでRWIは、固定価格買取制度(フ
ィードイン・タリフ(FIT))は太陽光や風力等の買取に向けた助成金
が莫大となるだけでなく、温室効果ガス削減や雇用創出、エネルギーセキ
ュリティー向上の効果の面でも非効率と批判。
● RWIはこれまでもFITを批判する論文を発表しており、独国会で
はFITに懐疑的な議員が、しばしば引用してきた。助成金の増大への
批判を受けて独政府は近年、買取価格の引き下げを加速させている。
2.具体的な批判の要旨
(1)莫大な需要家負担
○ FITの買取価格は、太陽光発電で独電力取引価格の8倍、陸上風力で
も2倍に上る優遇水準であることに加え、FITが20年間にわたり買取を
保証することも手伝って、累計買取費用は莫大な金額となり、電力需要家
にとって将来にわたり大きな負担となる。
● 2009年に買取を開始した太陽光発電設備(年間発電量:約16億kWh)
を例に取ると、20年間の累計で総額90億ユーロ(1.2兆円)の買取費用
が生じる【図1】。また、2010年で新たな買取を打ち切ったとしても、
2000年から2010年までに買取を保証した電力の買取が終了する2029年
までに掛かる総買取費用は、太陽光発電で533億ユーロ(約7兆円)、
風力発電でも205億ユーロ(2.7兆円)にも上る。
(2)温室効果ガス削減の費用対効果
○ この総買取費用とCO2削減量を比較すると、費用対効果は太陽光発電
でCO2トンあたり716ユーロ、風力発電で54ユーロとなる。欧州排出量取
引制度(EU-ETS)では2005年の創設以来CO2トンあたり取引価格
が30ユーロを超えたことがないことを勘案すると、費用対効果の悪さが際
立っている。
● 最近の市場価格(約18ユーロ)と比べた場合では、太陽光と風力の買
取価格はそれぞれ40倍、3倍。
○ ドイツではFITとEU-ETSが並存しているが、本来はEU-ET
Sだけでも電力起源のCO2に対する削減インセンティブが働く。FIT
ではより高価格の太陽光発電を促進するが、これはEU-ETSを通じた
削減分に置き換わるだけなため、EU-ETS以上の追加的な削減効果は
殆どない。
(3)雇用創出効果
○ ドイツ環境省によれば、2004年から2007年までに再エネ分野の総雇用者
数は16万人から28万人へと70%強増加し、2020年には40万人が見込まれる
としているが、これは燃料上流や化石燃料分野での雇用喪失や費用増加に
よる他産業での投資節減等のマイナス要因を織り込んだ数字(純雇用者数)
ではない。純雇用ベースでみた場合にはゼロないしマイナスの分析結果を
示す論文の方が多い。
○ 純雇用者数を2020年までに+5.6万人と見込む環境省の委託調査結果も
あるが、これは海外からの輸出入の状況に大きく依存するとの条件付きの
数字である。実際、近年ドイツ国内で設置される太陽光発電設備の半分以
上は中国等からの低廉な設備の輸入で占められており、雇用創出効果は国
内よりも中国をはじめとするアジア諸国にもたらされている。
● ドイツの再エネ関連の貿易額は、輸入額14.4億ユーロに対し輸出額は
2億ユーロに過ぎない。
(4)エネルギーセキュリティー向上効果
○ 太陽光や風力は間欠性電源であるため実際にはバックアップ電力として
ガス火力発電を待機させる必要がある。ドイツではガスの4割弱はロシア
から輸入されているため、セキュリティーの向上には必ずしも繋がってい
ない。
(5)技術革新効果
○ 電源別に買取価格に差を設けていることにより、政府は電源毎に不公正
な競争条件を課し勝者・敗者を決めている。また買取価格逓減制の下では、
短期的な既存技術を促進するに留まり革新技術による刷新も阻害している。
競争力のないエネルギー源に対しては大量生産でなく研究開発支援に向け
た基金の整備によりコスト低減を図るべき。
3.RWIによる提言
○ ドイツを範として世界的に普及が進むFITであるが、上述の理由によ
り一部が評価しているような輝かしい制度ではなく、莫大な助成金を伴う
にもかかわらず経済・環境の両面で効果が薄い失政である。FITを導入
している他の欧州諸国の政策決定者は、ドイツのFITを模倣して導入す
るのではなく、競争力の弱いエネルギー源の支援策を精査すべき。
● 代替する支援策の例として、EU-ETS及び再生可能エネルギー電
源の研究開発に特化した基金を挙げている。
以上