I'm a capitalist!

先日、Palo AltoにあるAurora Equityのmanaging partner, Dr. Jaleh Daieと、ある(見た目高齢な)起業家とともに昼食をとっていたとき、彼女が「I'm a capitalist!」といったことがまだ耳に残っている。起業家が、「ベンチャーキャピタル(VC)というのは、お金が必要なのか?」という質問をしたことに対する回答の流れの中での一言だった。会話の流れから説明すると、彼女の言葉は、「投資をした金額を上回ってくれば、その時点で売るのだ」という資本主義の原則を、端的に説明したものである。

Dr. Daieによるとバイオビジネスでは、liquidationまでに最低7年はかかるという。それは必ずしもIPOだけを意味しない。しかし、その付近の時点で、ビジネスの価値が投資した金額を上回っていれば、cashに変えてしまうという。VCは、ファンドの運営者であるから、投資家に対して利益をもたらさなければならない。通常ファンドは10年程度の期間で運用を行なう。1年目で運良く有望な起業家を探し出すことができ、ほぼ全額投資することができるという状況はほとんど考えられないため、投資して7年経つというのは、ほぼファンドの運営期限に近づいていることが予想される。だから、なんらかのexitが必要となるのは容易に想像できる。

この起業家は、プロトタイプを量産化に持っていくために資金が必要だと説明していた。私は、「それならば、既存の取引先から出資を仰ぐことが先決ではないか」とコメントしたが、彼女がこの起業家に対してアドバイスしたのは、「もし、VCを含め、金融機関などからお金を調達するなら、その既存取引先とのビジネスで利益が上がっていることを示す必要があります。VCの投資スキームは、非常に複雑で、それを理解していなければなりません。VCの考え方や話す言葉、雰囲気を肌身で感じなさい。そして、もし、自分の持分を減らすのが嫌ならば、銀行に行ってお金を借りなさい。」というものだった。

先の「VCはお金が必要なのか?」という質問をしているこの起業家の越えなければならないハードルは高いかもしれない。こんな起業家にこそ、メンターのような存在が必要である。そして、Dr. Daieのような"I'm a capitalist!"とはっきり主張できる人が、そんなメンターの一人になりえるだろう。そして、なにより、この一言に、資本主義の考え方が凝縮されているような気がする。何気ない昼食の味は覚えていないが、彼女の端的な言葉は決して忘れることはないだろう。
by yoshinoriueda | 2004-11-20 17:00 | 対話の中から発見する! | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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