『原発大国フランスからの警告』(1)
2012年 04月 30日
1974年11月15日に発表されたフランスの原子力発電所の設立に関する報告書は、ジスカールデスタン中道右派政権(1974〜81年)の産業研究相、ミシェル・ドルナノによって起草され、「ドルナノ報告書」と呼ばれているとのこと。
そこには、次のような記述があるらしい。
エネルギー供給の満足すべき方法を確保するためにフランスが遭遇する困難は、原子力エネルギーに大幅に依存することによってのみ、中期的に解決する。原子力エネルギーは結局、この時期において唯一、価格や支払いのバランス、供給の保証、そして《国家の独立》という問題への解答をもたらすフランスは、まさに《国家の独立》のために原子力を選択したのである。
そして、福島第一原発事故を契機として、
エコロジー相のコシウスコモリゼは、ASNの2012年1月3日の監視結果の発表後、「安全を担当している大臣として、この問題に関する、あらゆるイデオロギー的提案を拒否する」ときっぱり断言した。…「安全に関する価格がいくらになろうが、実施するべきである。原子力の安全に関しては価格と利益のバランスはない。リスクは無限である。もし事故が発生したら、その結果は計算不能だ」とも述べ、福島原発事故を教訓にフランスの原発の安全性を優先する考えを示した。とのこと。
フランスの原発問題は、煎じ詰めれば、「エネルギーの独立」という国家の大原則と「炭酸ガスの排出削減」という地球規模の人類共通の役割、そして「安い電気料金」という生活に密着した経済性−この三つの異なる要素を「安全」という括弧でくくって回答を探し出すことにかかっているといえる。と著者は言う。
日本は、広島・長崎への原爆投下を経験しているため、原子力基本法にも
原子力の研究、開発及び利用を推進することによつて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もつて人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とうたわれているとおり、平和利用の雰囲気が残っている。「国家の独立」「エネルギーの独立」という概念は、敗戦後の後遺症があるのかないのか、そこでは少し希薄に感じられる。
耳が痛いことは多いが、フランスが日本をどうみているか、著者の目を通してみておくことは大事かもしれない。