MOT=技術的基礎+コミュニケーション

以前、技術系の学生の方と話をしていた時に、それを聞いていた教員の方が、「こうすればいいというだけでなく、こんなところは意識を変えなければダメだということを交じえて話をしてほしい」と言われたことがあった。ダメな例を挙げるのは容易かもしれない。ダメなんだよ!といったところで、何か付加価値が生まれてくるわけでもないので、なぜダメか、どうすればいいのかといったことを一緒に言わなければいけないと思うのだが、意識を変えなければいけないのは、「コミュニケーション」の大切さを理解することではないだろうか。

意識を変えることによって、多くの出来事は見方が変わっていく。そのような視点の変化というのは、人との対話などがきっかけになることは往々にしてある。もちろん、読書を通じて、視点の変化を得ることもできるが、それには自分を真っ白にした状態で吸収していかなければ、読みたいように読んでしまいがちである。

昨夜見たテレビドラマ「救命病棟24時」では、進藤先生が「解決してくれるのは、時間じゃない。・・・誰かと話して、何かを感じた。・・・だから俺はここにいられる」と言っていたが、まさにこの台詞は、人との対話から何かを感じ、何かに気づき、考え、前に進んでいくということの大切さを表しているように思える。独りで考えることは大切だが、発展するには、自分以外の助けが必要である。そこには「コミュニケーション」の存在が必要なのである。

では、どうやって「コミュニケーション」をとればいいのだろうか?その方法の一つとして、「ターミノロジー(terminology)」の理解が挙げられるだろう。弁護士が法律を勉強し、会計士が財務を勉強し、医者が医学を勉強して、自分たちの専門用語という「独自の視点」を構築するように、技術者ならば、何らかの技術的な基礎を持つことは、コミュニケーションの一要素である。

さて、技術系の学生との話に戻ると、「技術者的な発想を捨てろ」とは決して言うべきではないと思う。なぜなら、技術者的な発想こそが世界を変えると思っているからだ。これは、江島健太郎氏のblog「Kenn's Claircoyance」のエントリー「世の中をぶっ壊す悪意なきテクノロジー」に表現されていたのと同じように、個人的には、テクノロジーこそが社会の根源的な価値観を揺さぶると思うからである。

そんな中、「技術者発想を捨てろ!―実践的MOTでキャリアが変わる」という本を見つけた。おそらく、ここでいう技術者発想というのは、「技術バカ」というか、そんな感じの発想なのだろう。技術者の発想は技術ありきになりがちで、ビジネスとの間に大きなギャップがあるということはよく分かる。読み進めるうちに、「どんな分野でもいいから、まず究めることが大事だ。」ということがあとがきの直前に書かれていた。これは、技術者発想ではなく、技術者の基礎なので納得できる。先のターミノロジーを理解することに役立つという点で、賛成できる。

しかし、その後に続く部分に、「技術を究めたことのない人には、技術予測はできない。トレンドを読むだけで精一杯だろう。顕在ニーズをどれだけ調べても、そこはビジネスの戦場になっていて、利益にかえるのは難しい。かといって潜在ニーズを読むことは、不可能に近い。」といったようなことが書かれていて、「?!」と詰まってしまった。

このような考え方こそが技術者の驕り、まさに技術者発想のように感じる。技術が分かってなければダメだといわんばかりに読める。確かに、技術を究めたことのない人が技術予測はできないのは分かるが、トレンドを読むことができるなら、ビジネスパーソンとしてはまず合格点なのではないだろうか?実際、トレンドさえ読めないという人はたくさんいる。トレンドを読み、それを「作り出す」ことができるなら、ビジネスとしてはまあまあ成功するだろう。市場環境、つまりタイミングがよければ、大成功するだろう。

ビジネスパーソンとして合格点をとることができる人なら、顕在ニーズを調べるときには、潜在ニーズを読むことも同時に行なうだろう。というか、そうでなければ、合格取り消しだ!そもそもニーズを読むということは、技術をどれだけ知っていてもできないという側面もある。

この本は、タイトルで「技術者発想を捨てろ」といいながら、実際は、技術をしっかり学んで、その上で、現場の中で、ビジネスを作り出せということを言っているように見える。つまり、技術者による技術者のための啓蒙書なのだろう。

MOTと名のつく書籍は、概して退屈だ。(ゴメンナサイ、悪気はないんだけど、やっぱり退屈なんです...)経営のような深さもなければ、精神論に終始するようなところもある。名前だけを聞くとなんだか特別なもののように思えるのかもしれないが、実際、それほど複雑怪奇なものなのだろうか?

もし、今、技術系の学生の方々に一言アドバイスするとすれば、「踊らされるなよ!」まず、これに尽きる。そして、もう一言、いわせてもらえば、「コミュニケーションの大切さを理解しよう!」ということになるだろう。そう、流行に流されることなく、まず、自分の基礎を築くこと。その過程でも役に立つのが「コミュニケーション」である。

つーか、自分の課題でもあるのだが...(^^;;

で、今日の自分なりに考えた方程式:MOT=技術的基礎+コミュニケーション
Tracked from 王様のブログランキング at 2005-05-10 17:41
タイトル : エンジン
どうもこんにちわブログ管理人です。 ブログサイトの調子どうでしょうか? 管理人もブログ頑張って更新しておりますよ。 面白いサイトはどんどんのっけてくのでよろしく! さてさて近況と言えば昨日の月9ドラマ[エンジン]を逃して、 かなり(ノ_・、)ショボーン・・... more
by yoshinoriueda | 2005-05-09 12:45 | いろいろ読んで考える! | Trackback(1) | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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