研究開発に税金が投入されていた東大発ベンチャーSCHAFTのグーグルによる買収に対する経産省の反応
2014年 02月 14日
「なんで海外なの」。1月、経済産業省幹部が1件の企業買収に声を荒らげた。米グーグルによる東大発ベンチャー、SCHAFT(シャフト)の買収だ。同社は昨年12月に米国防総省が開いたロボット技術の競技会で首位になり、日本発の高い技術を見せつけた。METIの気持ちも分からんではないが、事業をやっているほうからすれば、カネが回らなければやってられない。「買収する側でビジネスモデルが描けないと、買収もできない。」ということだと思うが、SCHAFTにすれば、背に腹は代えられないだろう。
幹部が憤るのは、SCHAFTの人型ロボットの核となる特許に国の予算が投じられているから。特許の一つは、もとは経産省傘下の産業技術総合研究所での研究が生んだものだ。経産省は金額を明らかにしないが、同社の技術に税金が入っていることは認める。
関係者によると、SCHAFTは日本企業にも支援を打診したが、断られたという。経産省所管の官民ファンド、産業革新機構も打診を拒んだという。
「せっかく日本で生まれた技術をなぜ国内で育てられないんだ」。経産省幹部には、グーグルによる買収が「研究は一流、事業化は二流」という日本のベンチャー育成の縮図に見える。
経産省は6月に改定する成長戦略の目玉に、日本の大企業によるベンチャー企業のM&A(合併・買収)拡大を据える方針だ。グーグルの買収は、具体策を練ろうという矢先に起きた。身内もからむ不都合な買収劇に、経産省関係者は動揺を隠せないでいる。(高橋元気)