その微笑みに癒されて

オフィスで仕事をしていると、IDカードを吊るした緑色の紐を首から下げ、体の前に書類を抱えた女性が、部屋に入ってきた。男性がほとんどの職場に、女性が入ってくるだけで、空気が変わるような、明るさが増すような、そんな雰囲気だった。

白いブラウスの上に薄いベージュのカーディガンを羽織り、きれいなインディゴブルーのジーンズを穿いていた。少しうつむき加減の表情だったが、全体の雰囲気から、一瞬でその女性が彼女であることに気がついた。卒業以来、ほとんど会っていない同級生だが、大勢の人の中から彼女だけを識別できる自分に驚いた。

同僚が座る後ろにあるロッカーやバインダーに綴じられた書類を見ようとして、ふと目線を動かした彼女は、窓際にいる私を捕らえたようで、一旦行き過ぎた目線がこちらに戻ってきた。彼女のほうも、私に気づいたようだ。

書類の収納状況などのチェックをしながら、窓際にある私のデスクの斜め前まで歩いてきた。彼女は、昔と変わらない柔らかな微笑みを浮かべていた。

「何やってるの?」
「うん、備品や書類の収納状況のチェック(^_-)」

交わしたのはそんな会話だっただろうか。長い間会っていないにもかかわらず、偶然会ったにもかかわらず、「久しぶりだね」という言葉を交わすまでもなく、ただ、淡々と日常の中に溶け込んで行った。利害を挟まない時代に出会い、お互いに相手のことを良く理解し、固い絆、信頼関係のようなものがあるからだろうか。あるいは、ただただ、彼女の柔らかな微笑みに心を癒されたからだろうか。

彼女は、微笑みながら、また壁際のロッカーや書類の山を確認していった。彼女と交わした口調から、同僚が興味深げに彼女のことを目で追いかけていた。


そんな夢の中の物語。仕事の中でもがいている自分が、誰かに救いを求めたのだろうか...
 
 

  by yoshinoriueda | 2014-04-20 08:41 | ショートストーリー他 | Trackback | Comments(0)

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