確かに参考になるケーススタディかも:再生エネに集中、欧州電力の巨人エ-オンの「転向」

再生エネに集中、欧州電力の巨人エ-オンの「転向」」という記事によると、
欧州電力・ガスの最大手、独エ-オンによる「転向」が話題を呼んでいる。独政府などの再生可能エネルギ-優遇策に懐疑的だった同社が、事業を再生エネや顧客サ-ビスなどに絞り、原子力・火力の従来型発電などを別会社として上場させるという。大胆な戦略転換は「環境派」に礼賛されそうだが、背後にリスク回避や政府への意趣返しの思惑も垣間見える。同社の決断は、これから電力自由化が本格化する日本への示唆も多い。

■原子力・火力・水力は別会社化

「欧州、世界のエネルギ-市場が劇的に変わり、現状のシステムでは対応できない。再生エネは電力だけでなく、この市場で消費者の果たす役割にまで革命をもたらしている」。エ-オンのヨハネス・タイセン社長は12月1日の会見でこう訴えた。

同社の計画によると、エ-オン本体は太陽光、風力の再生エネと送配電、顧客サ-ビスの3部門(従業員数約4万人)に絞る。2016年に原子力・火力・水力の従来型発電と石油開発、石炭や液化天然ガス(LNG)などのエネルギ-取引の3部門(同約2万人)を別会社として切り離し上場させる方針だ。

この決断を独紙は「(独政府の政策の)『エネルギ-転換』の餌食になった」(フランクフルタ-・アルゲマイネ)などと大きく伝え、他の欧州メディアも詳細を報じた。同社の欧州での圧倒的な存在感ゆえだ。
エ-オンの13年12月期の売上高は1,224億5,000万ユ-ロ(約18兆円)と、欧州2位の仏GDFスエズに400億ユ-ロ以上の差を付ける。

ちなみに日本の同業と比べると、売上高は東京電力・東京ガスの合計の2倍強。欧州最大の経済大国ドイツを拠点に事業エリアを広げてきた姿は、首都圏を地盤に陣地を広げようとする東電や東ガスの将来図と似る。

もっとも足元の業績は厳しい。13年の純利益は25億ユ-ロと3年前から6割も減った。売上高がエ-オンの3分の2以下のエネル(イタリア)やフランス電力公社(EDF)にも劣る。

ドイツを含む欧州では高い固定買い取り価格を通じた再生エネの普及促進策で電力需給が緩和。卸価格が下落し、大手各社は不採算のガス火力発電所などの一時停止や閉鎖に追い込まれている。エ-オン自らも再生エネを拡大するが、業績悪化を食い止めるには力不足だ。

タイセン社長は昨年10月、似た状況にある他の欧州電力・ガス大手9社のトップと連名で、欧州連合(EU)の過度の再生エネ優遇を見直すよう声明も出している。

だが、わずか1年あまりで“垂直統合モデル”からの決別を決定。しかも再生エネを中核に据えるという。会社分割を「1月から検討してきた」というタイセン社長。前向きな理由に関しては冗舌だ。

いわく「新しいエネルギ-産業は大きく変貌し、旧来型エネルギ-より成長率が高い」。規模のメリットで陸上風力や太陽光発電所の発電コストで比較優位にあるという自負がある。また、各国政府が手厚い買い取り価格で振興する洋上風力は資金が必要で、エ-オンのような大手以外の参入は難しい。

さらに送配電以下の「中流・下流」を残すのがカギだ。同社は英国の770万件、ドイツの610万件を含め計3,300万件の顧客基盤を持ち、近年は欧州各地で蓄電池の技術革新も進む。

「(インタ-ネットの活用で)送電・送ガスの役割がよりスマ-トになり、デ-タ分析ができる」「蓄電技術があれば、消費者が独立した発電事業者になれる」。同社長の言葉からは、再生エネを含む需給変動に応じた省エネ提案、小口電力の一括転売などで収益を探る狙いがうかがえる。

■原発の廃炉リスク回避も狙う

かたや、分離する火力発電は目先の収益好転は望めず、最上流の石油ガス開発は6月以降の原油価格の下落で収益悪化は避けられない。エネルギ-産業の「スマイルカ-ブ」のうち、思い切って上流側を切り離す計画は経済的に一理ある。

イメ-ジ面でもプラスだ。日本同様、欧州でも化石燃料を多く消費する電力大手は二酸化炭素(CO2)排出量の点から環境派の攻撃を受ける。だが新体制では化石燃料フリ-の「グリ-ン・エ-オン」をアピ-ルしやすい。

ただ、タイセン社長が軽く触れた「もう一つの理由」も、深読みした方が良さそうだ。ドイツで22年までの段階的な廃炉が決まっている原発の扱いだ。

現時点で原発7基を抱えるエ-オンはすでに廃炉費用として145億ユ-ロを引き当て、十分との立場を取ってきた。同社長は「負債はエ-オンに残り、新会社は負債ゼロで発足する」と説明。新会社は今後の火力発電所の追加リストラ費用も含め余力はあり、上場後の株主が追うリスクは限定的という。

原発分離の伏線はあった。5月に独メディアが一斉に報じた、官民共同の「廃炉基金」構想だ。エ-オンを含む独電力3社が今後の費用が膨らむことを想定し、政府も資金を拠出する基金に移し廃炉を担うアイデアを水面下でまとめたというもの。原発版「バッドバンク」構想とも呼ばれる。

政界では電力会社の経営リスク軽減のため理解を示す向きもあったが、結局、メルケル首相が「電力会社がすべての責任を追う」と説明し、いったん立ち消えになった。

エ-オンは今回、原油価格が再上昇すれば高収益が期待される石油開発との「抱き合わせ」による原発の分離で仕切り直したともいえる。

廃炉費用に関しては不透明なものが多く、1基あたり30億~40億ユ-ロとの試算もある。新たな枠組みなら、仮に廃炉費用が膨らんだとしても新会社と政府が協議するのが筋。株式市場は廃炉リスクを回避できると受け止め、エ-オンの株価は急上昇した。

エ-オンはこれまでも政府に対し気骨のあるところを見せてきた。同業のRWEとともに、原発運転期間の延長を前提に合意した「核燃料税」が政府の脱原発への転換後も廃止されないのは違法だと提訴。地裁では両社が勝訴し、政府の分が悪い。長らく電力会社の「顔」だった発電所の分離には、政府をさらに揺さぶる効果がある。

大胆な会社分割に踏み切る背景には、制度の柔軟さもある。欧州は日本に先駆け、発電と送配電、小売りなど電力・ガスの機能は分離済み。かつては一体運営が基本で20~30年を見据え投資計画をたてる装置産業の発想だったが、激変期には企業の姿を変えやすい。

「いまだに彼らは大規模電源に依存する。時代は小口・分散型電源なのに」。約30年前から再生エネ産業にかかわってきた独IBCソ-ラ-のウド・メアシュタット社長はかつて電力大手をこう酷評していた。タイセン社長は「政治的思惑ではなく、技術革新が会社分割の理由だ」と説く。好意的にとれば、もともと社外の批判の合理性を理解し、今が転換の好機とみたのだろう。

ドイツは00年に再生可能エネルギ-法が施行され、今年前半には再生エネが発電量の4分の1を占めるまでになった。その年に最大手が自ら選んだ会社分割という「解体」。再生エネの普及、脱原発、自由化、発送電分離――。日本でも身近なテ-マだけに、エ-オンの決断がどういうインパクトを持つのか、一つのケ-ススタディ-としてみると興味深い。
とのこと。たしかに、参考になる一つのケーススタディなのかもしれない。

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by yoshinoriueda | 2014-12-18 12:52 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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