高原社会では「衝動」をテコに経済合理性限界曲線の外側にある社会課題を解決しよう:『ビジネスの未来』(山口周)
2021年 04月 23日
「経済成長」ではなく、「高原社会」に入った今、経済合理性限界曲線の外側にある社会課題を解決していこう。
そのためには、市場原理至上主義では難しく、「衝動」によるソーシャルイノベーションが大切。
「時間」
私たちの社会システムは「時間によって資本の価値が増殖する」という前提にして構築されているが、「利子=資本の価値」がゼロになったということは、つまり「時間の価値」もゼロになったということだと述べている。
「時間」に価値がなくなったから「金利」の価値も下がっているわけで、「時間」に価値がなくなったことにより、私たちの社会がすでに「高原」に達しており、時間を経ることで上昇・成長・拡大するという期待が持てなくなったのだとする。
そして、「ミルトン・フリードマンに代表される市場原理主義者は、政府は余計なことはせずに市場に任せておけばあらゆる問題は解決していくと主張したわけですが、それは経済合理性限界曲線の内側にある社会課題だけで、ラインの外側にある課題は原理的に解決できません。」と説明している。
経済合理性は、一定の基準に基づいて成立している。例えば、戦国の世では、基準は土地であり、土地が石高を示し、経済性を表す指標となっていた。
例えとして、油滴天目茶碗は価値が「消費されていない」ため、今でも、高い値がついていることを挙げている。
現実社会では、必ずしもそうとはいえないこともある
限界費用ゼロ社会のようなイメージであれば、資産はサンクになり、時間の価値もゼロに近いというイメージとよく合う。しかし、電力系統のように、瞬時瞬時の需給マッチングをしてバランスをとるために設備が必要であれば、資産の価値は、むしろ、時間とともに高まる。例えば、高速調整力に対しては、高い対価が払われるようなものだ。
こういった電力供給は、熟練の技が積み重なって達成されており、品質の高い電気が届けられているのだが、一般の人たちは、電気は空気と同じように、そこにあるものと考え、背後で、このような高度な需給調整がなされていることは知らないだろう。まさに、電力の安定供給を支えてきた人たちがその役割を果たしてくれていたから、あえて知る必要もなかったのだ。
ただ、技術の進歩は決して侮ることはできない。太陽光発電のコストも相当低下し、インバーターなどのパワーエレクトロニクスも低廉になって普及してくると、需給マッチングは、熟練の技からAI(人工知能)に置き換わっていく部分が出てくるかもしれない。とはいえ、まだそこまで行っていないというのが現状である。
社会的課題の解決(ソーシャルイノベーションの実現)
:経済合理性限界曲線の外側にある未解決の問題を解く
文化的価値の創出(カルチュラルクリエーションの実践)
:高原社会を「生きるに値する社会」にするモノ・コトを生み出す
さらに2つ目の「文明的豊かさ」から「文化的豊かさ」へという流れについては、大量生産・大量消費だったところから「大きく、遠く、効率的」という価値観を転換して、「小さく、近く、美しく」に移行すべきだと説く。
ここは、まさにその通りだと思う。
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