関西イノベーション・フォーラム メモ

「イノベーションと企業改革-大企業と中小企業の連携-」と題された関西学院大学産業研究所主催の関西イノベーション・フォーラム(pdfファイル)に参加した。大阪商工会議所の地下の会議室はほとんど一杯になっていた。ウェブで検索しても、なかなかこのフォーラムの概要がアップされていないので、誤解を恐れず、私が理解した主なことがらをメモしておこうと思う。

シャープ㈱ 代表取締役副社長・東京支社長 安達俊雄氏の講演骨子

○シャープのDNA:「思わず真似されるようなものを作りなさい」
 シャープの創業者・早川氏は、関東大震災後、大阪にて再起を図る。ラジオ、テレビ、電子レンジ、太陽電池などを日本で初めて商品化。ものづくりは得意。
 第5世代の液晶(主にPC用)までは、“Leapfrogging”競争だったが、第8世代(亀山第2工場)、第10世代(堺)に関しては、シャープが一人勝ちする見込み。これは、第6世代の液晶(主にTV用)を製造する亀山第1工場から、真似されないようにほぼ完全にブラックボックス化したこと、第8世代の液晶製造には技術的に大きな壁が存在しブラックボックス化で他社が追随できなくなったことなどが勝因。
○「選択と集中」の戦略において、あえて「マイナー」だった「液晶」に集中。
 '98当時、シャープの設備投資は、IC関連事業が大きく、液晶事業は極少。利益ベースでも、'98当時は、液晶事業は赤字。そのような「マイナー」であった液晶事業を選択し、集中的に経営資源を投資。
 '07時点では、液晶事業への投資が大幅に拡大。利益ベースでも黒字を計上。
○シャープによる産業集積の結果、亀山市が地方交付税不交付団体に。
 液晶は裾野が広い産業。三重には、多気工場と亀山工場の周辺に、液晶に関する産業集積(クリスタルバレー)が形成された。その効果もあってか、亀山市は、'06に地方交付税不交付団体になった。
○シャープが「液晶」で目指す地球環境への貢献について
 液晶の消費電力節減に努めている。(同じ画面面積なら、7年の間に消費電力は1/2に削減。同じ消費電力なら、画面面積は2.6倍に増加。)
 「臨場感溢れる液晶を使って、遠隔地とテレビ会議を行なうことにより、出張による移動を減らし、CO2を削減する」という構想を持っている。
 全世界の太陽電池製造能力が2.6GWである中、シャープは堺の新工場に、製造能力1GWの太陽電池ラインを建設予定。太陽電池で地球環境に貢献。なお、薄膜系太陽電池は、ガラス基板上に蒸着するという技術が液晶と同じであり、ユーティリティーを共有化することで、大きなシナジーを生み出すことができる。

(独)中小企業基盤整備機構の後藤芳一理事の講演骨子

○中小企業ものづくり支援法では、「基盤技術」を強化するための政策支援を目指す。
 日本の製造業は、一貫して付加価値を生み出し続けており、現在も増加中。非製造業は、すでに頭打ち。にもかかわらず、学生は非製造業への就職に流れる。将来的には、金融や物流などの世界でも競争力強化が必要となるが、それまでは、日本は「ものづくり」でつなぐしかない。
 従来は、「先進的な取り組み」に対する政策支援を実施してきたが、トップランナーは、十分な体力を持って成長していくことができるようになってきている。「中小企業ものづくり法」では、トップランナーを支えている鍛造、鋳造、めっき、金属プレス加工、切削加工、金属熱処理、レーザー加工、組み込みソフトウエアなどの「基盤技術」に焦点をあて、政策支援を行なうこととした。
○製品・サービス融合型産業に向け、ビジネスモデルを進化させなければならない。
 大手企業も、「刹那でのベストな調達」ができなければ生き残れない時代になっている。地域という枠に囚われず、得意なところを得意な人がやるということで付加価値を上げるようなビジネスモデルが強い。(例えば、京都の企業が集まってやった、というだけでは、京都のためにはなっても、顧客のためにはなっていない。)
 なお、ビジネスモデルの進化は以下のように深くなる。
 レベル1:受注生産。品質と価格が生き残りを決める。ものづくりが決め手。
 レベル2:顧客密着型で総合的にニーズに対応する。プロジェクトマネジメントが決め手。
  (例:ESCOビジネス)
 レベル3:顧客満足、ソリューション指向。例:自己修復機能を備えた機器
 レベル4:需要創造指向。(例:アップルのiPod)
○参考リンク
FAQ「モノ作り中小企業支援について」
元気なモノ作り中小企業300社

東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員の小川紘一氏による事例紹介の骨子

○オープン・イノベーションの時代=中小企業の時代
昔は大企業が1社完結で技術を囲い込み。現在は、多数の中堅・小規模企業が参加する水平分業型のオープン・イノベーションの時代に変わっている。
例:ソニーのmini Discと記録型DVDの差は、「1社完結の独占規格vs標準化された技術」の差。記録型DVDの世界には中小企業が多数参入し、出荷台数は爆発的に伸びている。(記録型DVD:1.3億台、mini Disc:0.1億台)
○オープン・イノベーションのなかでも、「摺り合わせ型・匠の技」で圧倒的シェアを持つことが可能。
自社の得意技からプラットフォームを形成している中堅企業は、圧倒的な市場支配力と利益の源泉を構築できる。(例えば、日本製の光ピックアップのシェアは、DVD-ROMでは98%など世界市場で圧倒的なシェアを持つ。)
例:テクニカフクイ(福井県越前市)
世界で最も高度な摺り合わせ型オプト・メカトロニクスの量産設計ノウハウと製造ノウハウを持つ企業。全世界のDVDの15~20%の光ピックアップを製造。高度な信頼性が必要になる車載用DVDの光ピックアップのシェアは60%。

by yoshinoriueda | 2007-11-18 22:09 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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