海運や航空業界でも排出権の需要が高まる?!

2008/10/30 日経産業新聞「低炭素社会への道 第1部 走り出す欧州 3」によると、
 欧州は温暖化ガス削減に市場メカニズムを利用する排出量取引で世界の先頭を走る。2005年に欧州排出量取引(EU―ETS)が始まり、07年は域内の取引所で年間500億ドル(5兆円)が動いた。何の価値も持たなかった二酸化炭素(CO2)が巨大な金融ビジネスを誕生させ、新たな雇用を創出しているが、その一方で新たなあつれきも生じている。

 「企業への有償割り当てが増えれば、経済に与える影響が大きい」「産業への配慮が制度をゆがめ、排出削減につながらない」――。09年末に決まるポスト京都議定書の枠組みをにらみ、欧州では13年から始まる第三期EU―ETSの仕組みづくりに向けた調整が加盟国間で続いている。

 20年までの第三期では、現在は企業に無償で割り当てている排出枠を減らし、有償購入の比率を増やす。現在、企業が有償で購入する排出枠は排出量の1割にとどまっている。この比率を上げ、やがては全量をオークション(公開入札)方式で有償にするというのが欧州の目指す方向だ。

 欧州の産業界の負担は年間450億ユーロ(5兆6,000億円)を超える見通し。温暖化ガスを削減できない企業は重い負担に苦しむことになる。

 温暖化ガスの大口排出源である電力業界は制度変更の影響が最も深刻な産業の一つだ。第三期では、発電事業者は発電施設の排出量のすべてを有償で購入することが検討されている。しかし、排出枠の割り当てに対する考え方は同じ電力業界でも欧州の西と東で驚くほど違う。

 「オークション方式が最も簡単に温暖化ガスを減らせる。政府が得た収入はCO2の回収・貯留など新技術の開発に投入すればいい」。英国発電事業者協会(AEP)のアンディ・リムブリック環境局長はオークション方式による割り当てを素直に評価する。

 電力自由化の結果、英国では発電事業者の寡占化が進んだ。排出枠の購入により事業者負担が増えても、価格転嫁をしやすい状況にあることもオークション方式を支持する材料となっている。

 一方、「大幅な電力料金の上昇が産業を停滞させる」と反発するのが、ポーランドをはじめとする中・東欧諸国だ。

 中・東欧では、燃料費が安い石炭火力発電の比率が高い。石炭利用が多い分、西欧諸国に比べ発電量あたりのCO2排出量も多くなる。欧州連合(EU)加盟により工業や経済がようやく発展の階段を上り始めたにもかかわらず、EUの気候政策がそれに水を差そうとしていると映る。

 日本企業もEU―ETSと無関係ではいられない。第三期ではEUの港や空港を利用する船や飛行機も排出削減の規制対象となる見通しだ。海運会社や航空業界に与える影響は大きい。

 日本郵船の左光真啓環境特命プロジェクト事務局長は「排出量すべてをオークションで購入しなければならない場合、連結経常利益(08年3月期は1,984億円)が丸々吹き飛ぶ」と試算する。

 日本郵船は、太陽光発電や燃料電池を活用し、船から出るCO2の削減に向け動き出したが、その効果が出るのはまだ先のことだ。EUが仕掛けた「炭素エコノミー」はもはや欧州の枠を超え、世界の経済に影響を及ぼしつつある。

 排出量取引が経済への影響を強める一方、グローバルな金融危機と景気減速の影は濃さを増す。世界に先駆けて炭素市場をつくり、炭素エコノミーの主導権を握る欧州が温暖化対策と経済成長の両立という課題にどういう答えを出すのか。第三期EU―ETSを巡る議論の行方から目が離せない。
とのこと。海運や航空業界は、それなりに海外のネットワークをもっているのかもしれないが、排出権を廉価に調達できるほどのものではないのではないだろうか?今後、欧州便をもっている海運や航空会社でも排出権の需要が高まるのかもしれない。

ちなみに、記事の後ろのほうに、日本国内の話があって、
日本は産業界への配慮をにじませた日本版で、「排出量取引のスタンダードをつくる」(斉藤鉄夫環境相)としているが、世界の潮流からは離れている。
とあるが、世界の潮流から離れて、何が悪いのか?そもそも、EU-ETSが世界のスタンダードだと信じているマスコミや環境派、勉強しない議員などが間違っている。日本流の排出量取引があるならば、それを作り上げ、それを世界のスタンダードにするのが筋ではないか。個人的には国粋主義者でもなんでもないが、なんにおいても欧米のほうが優れているという先入観は捨てるべきではないか。
by yoshinoriueda | 2008-10-30 23:59 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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