分かりあえない時代、共通の目標を目指すことの難しさを知り、ただ「犀の角のようにただ一人歩め」
2009年 09月 09日
社会における問題とは、人間が問題と認識して初めて「問題」となる。そして「何を問題と認識するか」は個人の価値観や知識や経験に大きく依存している。・・・となる。気候変動問題では、「shared vision」がAWG-LCAの中で議論されているが、まさに、これこそ「共通の目標」を作ろうというところである。これには、さまざまな国の思いが絡まり合い、話がなかなかまとまらない。
知的な分野でも陰部リーディングはよろしくない。同じ分野の専門家同士で考えているだけでは創造性が弱まってしまう。・・・
3人で3人分の仕事をするためには、「違い」を鮮明にしつつも、その「違い」を埋めていこうとする姿勢が必要である。共通の目標に向かって3人で協働してこそ、文殊の知恵も生まれようというものだ。・・・
目標が同じだからといって、それに対する「思い」も同じとは限らない・・・
「飛雄馬よ。チームワークという言葉を美しいものに考えすぎるな!そんな甘いものじゃない。さまざまな正確の人間が集まって、お互いの長所短所で戦い、磨き合い、血みどろで築くのがチームワークだ」・・・「チームワーク」=「美しいもの」という建前を排除したうえで、多様性を生かして共通の目標を目指すことの難しさを真正面から喝破してるのだ。・・・
そんな中で、日本は、一人(国)だけ孤軍奮闘している。特に、経済産業省、資源エネルギー庁の官僚の人たちは、毅然とした態度で、日本の主張を述べている。
民主党が政権をとり、1990年比25%減を念仏のように唱えているが、今後、この交渉はどうなっていくのだろうか。誰とチームを組むのか。米国か、EUか、それともアジアか。
2009.9.7の朝日新聞の天声人語に次のようなことが書かれていた。
アメリカンフットボールの伝説的指導者ニュート・ロックニーに名言がある。<要は個人ではなくチーム一丸で動くこと。私は監督として、べストの11人ではなく、11人でベストになる選手を使う>コラムでは民主党の人事に関する話題が続いていたが、この名言は、含蓄が深い。
気候変動問題で日本がチームを組むべきはだれか。さんざんカモにされてきたのだから、チームなんて組まずに一国でやるのか。その勇気があるか。世界で果たすべき役割を考えれば、それは勇気ほどのものがなくても、一国でも歩める道を歩めばいいのではないだろうか。
ふと、「サイの角のようにただ一人歩め」というブッダの説話を思い出した。
仲間の中におれば、休むにも、立つにも、行くにも旅するにも、常に人に呼びかけられる。
他人に従属しない独立自由を目指して、犀の角のようにただ一人歩め。
四方の何処にでもおもむき、害心あることなく、何でも得たもので満足し、
もろもろの苦難に耐えて、恐れることなく、犀の角のようにただ一人歩め。
金の細工人が見事に仕上げた二つの輝く黄金の腕輪を、
一つの腕にはめれば、ぶつかり合う。
それを見て、犀の角のようにただ一人歩め。
このように二人でいるならば、我に饒舌といさかいが起こるであろう。
未来にこの恐れがあることを察して、犀の角のようにただ一人歩め。
実に欲望は色とりどりで甘美であり、心に楽しく、種々のかたちで心をかく乱する。
欲望の対象にはこの憂いのあることを見て、犀の角のようにただ一人歩め。
(原始仏教の美しい言葉(ブッダの言葉・悪魔との対話・神々との対話 中村元訳/岩波文庫より))