国連気候変動枠組条約AWG会合@タイ・バンコク 中間まとめ

タイ・バンコクで開催されていた国連気候変動枠組条約のAWG会合。途中までフォローしていたが、最後は現地からの電話やメール情報が頼りだった。

依然、先進国と途上国との溝は深いものの、「今思えば、かなり密度の濃い交渉をしていたのだと思う。熱気による興奮がまだ冷めない。振り返れば、1週目は主に交渉の進め方を議論し、2週目にようやく交渉モードに突入といった感じか。特にLCAは、2週目に入り、非公開での打合せが頻繁に実施された模様。

ということで、中間的なまとめをしておきたいと思う。
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1.日本の中期目標は「前向き」な雰囲気を醸出

オープニングセレモニーから日本の「90年比▲25%」という目標について多数言及があり、プレナリーセッションでも途上国やEUが歓迎する意向を表明。「他国の目標を高めるものである。」「日本に続け。」といった表現は見られたが、前提条件について触れられた発言は皆無。

米国による評価は、基準年が05年ではなく90年になったこと、水準が大幅に深彫りされていることから、議論を支配したいという思惑・交渉の流れを乱されることを嫌ってか、「日本の目標については、中身がよく分からない」というスタンスを取っている模様。

日本の中期目標の正式な説明については、プレナリーでは古屋大使に発言機会が回らず、KPのミーティングで交渉官が、「すべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意」が日本の目標を約束する「前提」条件であることを含めて説明。

南アフリカから「日本の目標は『真水』なのか?」という質問があり、これに対して日本は、「今後の交渉次第(it’s up to negotiation.)であり、現時点ではなんとも言えない」と回答。また、京都議定書の延長を意図していないことについても説明。

毅然とした態度で日本のスタンスが表明され、日本だけが高い目標を押し付けられるということがないよう予防線を張っているように思えるが、公平性や実効性、意欲的といったレベルがどういった指標であり、どの程度であればよいのかは、オープンな場では示されておらず、数字だけでは交渉をリードできないことが明らかとなった。これは、民主党政権による対策がこれから検討されるという状態にあるため、仕方がないのかもしれない。交渉官にとってはちょっと辛いかも...


2.米国は、途上国を含めた各国が「行動すること」をコミットするような次期枠組みを働きかけ

米国の提案のポイントは、「国内法に基づいた行動計画の国際的公約(internationalized domestic actions)」、すなわち途上国を含めた各国がまず「upfrontで」行動することを掲げ、その計画が十分であるかを相互にチェックするというもの。途上国の行動計画の内容は、先進国と同じレベルでなくともよいが、事前に計画を公表し、報告は必要とされるものの、「検証」すなわち「結果責任」は宙に浮いた形となる。

米国と中国は2国間でさまざまな対策を協議しており、両国が呑める案としては、「行動」をコミットするというこの形態が最善なのかもしれない。ただ、途上国は行動をコミットすること自体に反対。EUは、興味を示すにとどまった。

個人的には、日本もこの案に乗れるのではないかと思う。これでいけば「一生懸命やりました。でも、ここまでしかできませんでした。だから罰則はなしね~」となるわけだが、民主党政権のもとでは、当然「一生懸命」やる部分がかなり出てくるわけで、そうなれば、世界に対しても恥じることはなにもないだろう。

むしろ、変な負債を後世に残さなくてすむのではないか。そして、技術革新に邁進して、世界を席巻できるというシナリオが現実化する可能性も出てくる、というか残されてくると思う。

なお、米国の強硬な交渉姿勢は、評判がよくなく、交渉自体も米国の思惑通り進んでいない模様。


3.コペンハーゲンでの合意についてはさまざまな思惑が入り乱れており予断を許さない状況

コペンハーゲンでの合意宣言(declaration)として、LCA議長のマイケル・クタヤール氏がまとめた「4-30ページのドラフト」(Michael’s paper)というものが既に存在するという噂が会場では流れている。このドラフトでは、バリ行動計画の各項目(共通の目標、緩和、適応、技術移転、ファイナンス、キャパビル)などに関してまとめた文書と、その文書から引用される付属文書という形態がとられている模様。

ただ、EUが想定するシナリオでは、途上国と米国が入った形でLCA側の合意が成立すると同時に、日本やEU・ロシアといった現在の附属書I国のコミットメント、いわゆる京都議定書の延長の2本立てが出るというパターンか、米国の提案する各国の行動計画の寄せ集め(ペナルティなし)で合意、といったものが考えられているようである。

EUとしては、排出権市場を活性化したいであろうから、米国提案には乗れないだろう。というわけで、日本に対して猛烈にアプローチをかけてくるかもしれない。悪いことに(?!)福山副外相はどちらかといえばEUの考え方に親和性が高いようにみえるので、京都議定書が延長されるという、日本の国益にとっては最悪のシナリオが現実化する可能性がある。


4.先進国(附属書I国)の削減目標に関する議論は依然平行線

事務局が先進国の削減目標をまとめ、LULUCF除きで「16~23%」の削減にとどまるという試算結果を提示。日本の数字は25%削減により10億トンを切るレベルとなっている。この数字は衝撃的だ。

しかし、小島嶼国連合は「45%」を、アフリカ連合は「少なくとも40%」を求めており、途上国側の要求レベルとは依然大きく乖離。

日本は、米国がいないKPで議論を重ねても有益ではないと主張し、LCAとKPを融合させることを提案。これに対して、インドや中国をはじめとする途上国は猛反発。途上国はこれまでどおり、「一人当たりの排出量」、「歴史的責任」、「科学の要請」といったポイントを繰り返し、議論は平行線。交渉があまりにも平行線を辿っているので、「日本としても何か別の作戦を考える必要がある」とのこと。

2週目に入り、交渉団の間には、「数値目標を決めるためには、まずルールを決めることが先決」という雰囲気が出来上がり、LULUCFのルールを皮切りに議論がなされている模様。


5.新たなメカニズム(SCM、STM、NAMA他)についてはLCAでの議論を優先させる方向。CDM/JIの改善(京都メカニズム関係)は議論がなされているもののまとまる気配なし

セクター別クレジットメカニズム、セクター別トレーディングメカニズム、NAMAクレジットなど新たなメカニズムは、バリ行動計画の1(b)vでの検討項目として、LCA側での議論が優先されることになり、KPでの議論はLCAを受けて後から実施されることとなった。

既存の京都メカニズムのCDM/JIに関する改善等については、交渉テキストの項目に沿って議論がなされているが、各国がこれまでの主張を繰り返すにとどまり、前に進んでいない状況。

なお、日本政府(JICA)とLDCによるクールアースパートナーシップに関する会合が市内のホテルで開催されたようで、アフリカなどの途上国の交渉官を中心に多くの人が参加し、その有益性を認識。途上国は、小水力など再生可能エネルギーのポジティブリスト入り(あるいは、コベネフィット案件扱い)に期待し、採用されるよう意欲を示している模様。
***

といった感じかな。



<気候変動枠組み条約>特別作業部会閉幕 溝は依然大きく
バンコクで9月28日から開かれていた、国連の気候変動枠組み条約特別作業部会が9日、閉幕した。約190の国や地域が参加、12年で期限が切れる京都議定書以降の地球温暖化対策の枠組みを協議した。しかし先進国と途上国の溝は依然大きく、交渉期限となる12月のコペンハーゲンでの同条約第15回締約国会議(COP15)で、どこまで合意できるのかは不透明だ。
だっしょー。ハゲシク同意。

京都後の年内の完全合意は困難 議長国デンマークの担当相
京都議定書に続く地球温暖化対策の枠組み交渉の年内完全合意は、困難で、細かいルールなどの決着は来年に持ち越される見通しであることが8日、分かった。年末の国際会議の議長国、デンマークのヘデゴー気候変動・エネルギー相が同日、共同通信などの取材で明らかにしたもので、ヘデゴー氏は「会議の後にも、検討すべき詳細項目が多くあるだろう」と述べた。
人生、あせっても仕方ない。きっちりと、本当に削減するためにはどうしたらいいかを考えましょう~♪
by yoshinoriueda | 2009-10-09 23:51 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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