日本の森林が炭素吸収源ではなく排出源になる日?!

現行の京都議定書において、日本は森林吸収量として、1,300万t-C(4,767万t-CO2)が認められている。第一約束期間(2008年~2012年の5年間)の日本の削減義務量は1990年比6%であるが、3.8%はこの森林吸収源による効果が見込まれている。ちなみに、海外からの排出権によるオフセットで1.6%、温室効果ガスの排出量削減で0.6%を満たし、合計6%を達成するというのが京都議定書目標達成計画である。

木は、成長に伴い、炭素吸収量が低下する。この特徴が吸収量の算定のネックになる。

現在の京都議定書第一約束期間のルールは、「グロス・ネット」方式。林野庁の「吸収源対策としての森林整備について」によると、京都議定書における吸収源に関する条項は、
① 3条3項:新規植林、再植林、森林減少(ARD活動)
 1990年以降に行われた、
 ・ 新規植林(過去50年間森林がなかった土地に植林)
 ・ 再植林(1990年より前に森林でなかった土地に植林)
 ・ 森林減少(森林を他用途に転換)
 の3つの活動に限定し、その吸収量を計上。

 ② 3条4項:追加的人為的活動(3条3項以外の吸収源活動)
 3条3項の3つの活動以外の人為的活動(森林経営等)で、1990年以降に実施された分について、その吸収量を計上。
とのこと。過去の植林や森林減少を加味しつつ、1990年以降の人為的活動も加味される。

一方、ノルウェーやオーストラリア、スイス、中国、ツバルなどが主張しているのが、「ネット・ネット」方式で、これは、基準年からの増減で吸収・排出をカウントするもの。日本の人工林は、月日が経つにつれ、高齢化し、炭素吸収量は減少するため、このカウント方法が採用されてしまうと、2020年頃には、森林は排出源とみなされてしまうことになる。

鳩山氏や民主党は、「1990年比25%削減」にこだわるが、このようなルール変更を知らないままでいると、大変なことになる。つまり、森林が排出源扱いになるルールでLULUCF(Land Use, Land Use Change and Forestry)を考慮してしまうと、削減目標はさらに厳しくなってしまうのだ。

「ネット・ネット」方式が採用されない場合、たとえば、「グロス・ネット」方式であっても、2020年断面では、3.8%の吸収量は見込めず、せいぜい2%台後半から良くても3%台前半になってしまうだろう。

欧米は自分たちのいいようにルールを作り変えてしまう。日本がスキーのジャンプでメダルを独占するようになると、ルールを変えてしまう。ロータリーエンジンが驚異的な性能を発揮していると、レースでそれが使えないようにルールを変えてしまう。気候変動問題についても同じであろう。

数字だけで世界が引っ張れると思っている鳩山氏や、外務省の岡田氏・福山氏は、本当に愚かだと思う。私は彼らを選んでいないが、最近、彼らを選んだ人たちも愚かだと思うようになってきた。他人がどう思うかに惑わされず、本質を見抜き、人を選ぶべきだろう。

日本の森林は、炭素の吸収源ではなく、排出源になる。そんなふうに見られる日がくるのかもしれない。
by yoshinoriueda | 2009-10-30 19:35 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

清涼剤はSilicon Valleyの抜けるような青い空。そして・・・


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