「カーボン・マーケットとCDM」(JACSES(「環境・持続社会」研究センター)編、築地書館)
2009年 12月 29日
例えば、コンプライアンス・バイヤーからすれば、排出権の「質」はそれなりに問題であり、その部分が担保されないようだと、買うことは難しいということから、排出権の「質」をちゃんと見ようというのは正しい視点だと思う。
ただ、モノを買う場合の説明責任は、NGOなどの第三者に委ねるべきではなく、あくまで第三者意見は参考にとどめるべきだろう。一義的には、モノを買ったほうに説明責任があり、きちんと説明できるものであれば、堂々と取引すればいいと思う。
排出権市場は、いわば一つのゲームである。ゲームのルールをしっかりと理解していれば、それなりに遊べるわけだし、それなりに正しい買い物もできる。だから、逆に言えば、しっかりとルールを見なければならないということでもある。そういう基本的なところを知らずして、このビジネスに取り掛かろうという輩がいれば、それはやめておいたほうがいいだろう。ちなみにこの本は、そのルールを知るには、少し不十分だが、雰囲気を味わうことはできる。
もうひとつ。カーボンオフセットについての記載があるが、これに対するスタンスがよく分からない。カーボンオフセットは、善良な人々の贖罪意識を利用した商売であり、「いいことをしている」と思わせる宗教のようなところがある。個人的には、カーボンオフセットなど考える以前に、まだいろいろとすることがあると思うのだが、純粋な人は騙されてしまうのかもしれない。騙される人がいるから、商売は成り立つ。そういう類のものでしかない。
それも本書では取り扱っているが、完全に否定するわけでもなく、仕組みと課題を挙げるにとどまっている。そのため、スタンスがよく分からない。
CDMにはもっと奥の深い部分がある。それは、プロジェクトをやった人たちを中心に広まっていくものであり、第三者的に研究したり、分析したりしている人たちには分からないことのようである。しかし、その奥深い部分は、決して出てこない。なぜなら、それは書き伝えられるものではなく、諸般の事情により、語り伝えられるものであるからだ。そんな部分を普段から垣間見ていると、物足りなくもあり、スタンスがよく分からないということもあり、結局、この本で何が伝えたいのか、何がしたいのかよく分からない。
いつかJACSESの人に会ったら聞いてみたい。(よろしくお願いしますm(--)m)