2011年 07月 16日 ( 1 )

 

中野剛志に学べ!「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」とナショナリズム、経済、技術革新との関係

a0004752_21121590.gif遅ればせながら読んだ「経済はナショナリズムで動く ― 国力の政治経済学」(中野剛志、PHP)は、久しぶりに自分が考えていたことやもやっとしたことを晴らしてくれるものだったということもあり、読んでいてどんどんと引き込まれていってとても面白かった。

気候変動の国際交渉では、ナショナリズムを目の当たりにする。本書でも、「各国の利己的なナショナリズムは、地球温暖化に対する国際的な合意を困難にしている」と書かれている。そういった現実を目にしているからこそ、ストンとハラに落ちるところがあった。

ただ、それ以上に面白いと感じたのは、昨年度1年間を中心に学んできた「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」とナショナリズムや経済、そして現在研究の対象となっている技術革新などとの関係が示されているところである。少し長くなるが、引用すると、以下のようになる。
(MITのSuzanne Bergerらの調査結果("How we compete: What Companeis around the World Are Doing to Made It in Today's Global Economy", New York: Currency Doubleday, 2006)によると)企業の競争力の源泉は、その企業が過去に形成した「遺産」である。「遺産」とは、経験や技術、人的能力、組織能力そして制度的な記憶の蓄積といったものである。この「遺産」をいかにして動員し、再組織化するかが、企業の成功のカギを握っている。

この「遺産」の形成は、各国の経済社会制度に大きな影響を受ける。技術革新や生産性は、個人の能力のみの産物ではない。それらは、個人の能力と「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」が結合することによって可能となる。「社会関係資本」とは、金融制度、法制度、ビジネス慣行、官僚制、研究機関、公的文化といった、社会制度や文化の総称である。「遺産」とは、企業が成立し、最初に活動した国における社会関係資本の果実なのである。

バーガーらの調査では、成功した企業は、ナショナルなものから発生した「遺産」をうまく活用しているという。グローバルに活動する企業ですら、その本部を自国に置いているのは、企業競争力の源泉が安価な労働力にあるのではなく、ナショナルに形成された「遺産」にあるからなのだ。

グローバル化する世界においては、経済ナショナリストの保護主義の目的は、企業競争力の源泉である「遺産」の維持と発展のため、ネイションの社会関係資本を保護することである。このネイションの社会関係資本は、本書における「国力(ナショナル・パワー)」、すなわちネイションの社会的能力と同じものと考えてよい。
ソーシャル・キャピタルがそのような形でつながりをもっていたということを、恥ずかしながらこの本を読んで、はじめて理解できたような気がする^^;

さらにもう一つ面白いと感じたところを挙げるとすれば、「国力」とは、
他国に対する自国の強制力(power over)
だけではなく、
何かをするための自国の能力(power to)
もあり、日本にはそのポテンシャルがあるので、それを目指していくべきではないだろうかと問いかけているところ。「何をするのか」ということについては、よく考えないといけないのかもしれないが、それにしても、確かに、例えば製造という分野では、ノウハウの蓄積はまだあるだろう。そのためには、国でもなく個人でもない中間組織を大切にしながら、社会関係資本を充実していくことが大切ということなのだろう。

ハードコアな経済学の知識を持ち、普段もその知識を発揮する仕事をされている人と、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)について一緒に学んだときに、その人が、「これまでの経済学の常識では見落としている部分というのがあるのではないかと感じていて、ソーシャル・キャピタルというのは、その一つの解ではないかと感じているので、これを学んでいるのだ」と言っていたが、もしかしたら、なかなかいいところに気づかれていたのかもしれない。

この本の中には、いろいろと議論をしたくなることがたくさん書かれている。ただ、世間でここまでしっかりと考えている人は少ないかもしれない。マスコミや政策に関連したところにいる人たちは、色眼鏡で見るのではなく、こういった意見をきちんと受け止めていってほしいと感じる。

参考:
宮崎哲弥&中野剛志 - 復興に向かう国力論 (1/4)

宮崎哲弥&中野剛志 - 復興に向かう国力論 (2/4)

宮崎哲弥&中野剛志 - 復興に向かう国力論 (3/4)

宮崎哲弥&中野剛志 - 復興に向かう国力論 (4/4)


中野剛志先生のよくわかるTPP解説―日本はTPPで輸出を拡大できっこない!

  by yoshinoriueda | 2011-07-16 23:52 | エネルギー・環境 | Trackback | Comments(0)

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE